先日、日経ビジネスで
花王が、「エコナ クッキングオイル」
とその関連商品の販売自粛と製品回収した件
についての特集が組まれていました。
内容は、
「消費者団体が数年前からエコナの発ガン性
について警告していたにもかかわらず、
花王はそれを無視して(隠して)販売していた。
今回、発ガン性が認められたではないか、けしからん」
という噂が広まっているが、それは事実とは異なる。
というものでした。
この件について、少し調べてみました。
(時間の制約もあり、細かい点で正確さに欠ける部分も
あるかもしれませんがご容赦ください。)
事の経緯
発売当時に発ガン性が問題とされたのは
エコナの主成分である
「ジアシルグリセロール(以下DAG)」という物質。
安全基準はみたしていたけれども、
食品安全委員会(国の機関)が調査を続けており、
「適量の摂取であれば、問題ない」
という結論がほぼ出そうな状況だった。
そんな時、ヨーロッパで人工ミルクの中に
発ガン性の疑いが濃いグリシドール脂肪酸エステル(GE)
という物質が含まれることが新たに発見されました。
この物質はDAGに似た構造を持つため、
もしGEに変化したら、
発ガンの危険性があるかもしれない、ということで、
厚生労働省が、
「エコナの中にGEが含まれていないか調査せよ」
と花王に指示。
調査の結果、エコナにはほかの食用油よりも高い水準で
GEが含まれていることがわかったそうです。
GEに発ガン性物質が含まれるかどうか、
DAGがGEに変化するのかについては調査中のため、
花王は調査結果を待って対応することもできたけれど、
「消費者の安心」を考慮して、
エコナの成分からGEを低減できるようになるまで
販売を自粛することにしました。
にもかかわらず、消費者団体は、
それだけでは不十分として、
「発ガン性のリスクがゼロと言えて初めて
トクホの許可を与えるべき」
として、トクホの許可まで取り下げさせました。
(消費者庁ができたばかり、
というタイミングの問題もあったのでしょうが)
企業のリスク管理
この記事を読んで、
企業のリスク管理について、考えさせられました。
企業のリスク管理方針として、
リスクを事前に予防することと、
リスクが現実に発生したときに適切に対応すること、
の2つが求められます。
今回の、
「新たな物質が検出された時に、
その物質の含有率を技術的に下げることが
できるようになるまで、販売を自粛することに決める。」
という花王の判断に落ち度があったのでしょうか?
なかったと思います。
にもかかわらず、消費者団体は、
それだけでは不十分として、
「発ガン性のリスクがゼロと言えて初めて
トクホの許可を与えるべき」
として、トクホの許可まで取り下げさせました。
これは、事前にリスクを徹底的に調査をして、
発ガンの可能性がゼロであるとわかったものしか販売しない
ということを求めるに等しいものです。
しかし、その時点で発見されていないリスク
までも考慮した上で、発生可能性がゼロである。
と言い切ることは、事実上、不可能。
企業はどのように対応すべきか
もちろん、「消費者の安心・安全」を、
まず考慮しなければならないことは間違いない。
(ダイエット商品や人工甘味料入りのドリンクなども、
大丈夫なのかな?と思うことありますよね。)
しかし、リスクに対して
適切に対応している企業に対して、
"リスクが顕在化した"
ということだけをもって責め続けると、
結局企業は、
責められないようにすることに一生懸命になり、
"消費者の安全を第一に考えて行動すること"
を止めてしまうかもしれません。
消費者の安心・安全について、
企業の対応に完璧を求めた結果、
企業活動が左右されることになりました。
この商品そのものの安全性とは別次元のリスクに対し、
企業はどう対応すれば良いのでしょう。
リスク管理がますます難しくなりそうです。