ロシアの外相ラヴロフが

ヒトラーにもユダヤの血が流れていた、

と発言したことでイスラエルが激怒。

 

インタビューの中で、ウクライナのゼレンスキー大統領自身がユダヤ系であるにも関わらず、

なぜロシアはウクライナの「非ナチス化」のために戦っていると主張できるのか質問されると、

外相は「私が間違っているかもしれないが、ヒトラーにもユダヤ人の血が流れていた。

(だからゼレンスキーがユダヤ系であることは)全く意味をなさない。

最も過激な反ユダヤ主義者はたいていの場合ユダヤ人だと、賢明なユダヤ人は言う」と答えた。

 

この発言に対し、イスラエル政界からは右派か左派かを問わず、一斉に怒りの声が上がった。

イスラエルのナフタリ・ベネット首相は、

「このようなうそは、歴史上最も恐ろしい犯罪をユダヤ人自身のせいにし、

ユダヤ人を抑圧した者をその責任から解放するためのものだ」と述べた。

「現在のどのような戦争も、ホロコーストではないし、ホロコーストに似てもいない」

 

怒るのもごもっともな発言ですが

そもそもユダヤ人差別の根幹とは何なのか。

 

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反ユダヤ主義の起源

 

 

現代ではユダヤ人というとナチスの

ホロコーストが第一に出て来ると思いますが、

そもそものユダヤ人差別とは

中世以前、キリスト教の発祥と同時に

その苦難の道が始まります。

 

概ね反ユダヤ主義の根幹要因には

歴史的に4つの要素があるのです。

 

①ユダヤ教の中からそれを批判する立場として

キリスト教が生まれ、ユダヤ人を

イエスを殺した人類の敵とまで定めた事

 

②中世キリスト教社会において

イエスを神の子として認めなかったことで

ユダヤ人は宗教差別され

士農工商といった普通の仕事に就けなかった。

そこでユダヤ人たちは金貸しの道に活路を見出し、

巨万の富を築いたことでキリスト教徒たちから

妬まれ、排斥されたこと。

 

③12-13世紀の十字軍運動における

聖戦意識の発揚から、

外なる異教徒イスラムの手から聖地奪還するために、

内なる異教徒ユダヤを血祭りにあげることで

遠征費を強奪することをキリスト教が正当化した為。

 

④1543年にプロテスタント運動の

マルティンルターが、

著書「ユダヤ人と彼らの嘘について」

において、ユダヤ人への迫害と暴力を

正当化し、ユダヤ人差別を熱心に煽ったこと。

 

 

こうした歴史を見ていくと

キリスト教というのも実に

中身は腐ったものであることが分かるのですが、

 

この中で最も重要なのは

やはりキリスト教義に内在する

根幹的なユダヤ人差別にあります。

 

キリスト教が発生するまでのキリスト教徒は

皆ユダヤ教であったわけですが、

イエスを救世主として認めるか否かで

宗教は二分されます。

 

当時の十二使徒を含む

キリスト教上層部はユダヤ教の経典である

旧約聖書に対して、新約聖書を作り

ユダヤ教との決別を試みます。

 

例えばパウロの福音書の中では、

「ユダヤ人は主イエスと預言者たちを殺し、、

神に喜ばれず人類の敵となり」

 

等と記して、

当時エルサレムにいたユダヤ人のみならず

ユダヤ人全体にキリスト殺しの責任を負わせたのです。

(紀元30-100年頃の初期キリスト教は

ユダヤ教と自らを区分する為に

このような差別化を行う必要性があった。)

 

 

このことがユダヤ人たちの

苦難の道の始まりであり、

中世の西欧キリスト教社会において

ギルドにも所属できず、

犯罪の汚名を着せられたり、

不満の捌け口に仕立て上げられたり、

キリスト教に都合の良い形で虐げられてきました。

 

さらに時には各地から追放され、

カナンの地である聖地エルサレム周辺にも

帰る事が出来ず、長らく

流浪の民として受難の歴史を辿るのです。

 

 

 

ユダヤ教の信者からすれば神は

たった一人の唯一神であり

既に完全なのだから

子など必要であるはずがない。

ゆえにイエスキリストは神の子などではないし、

キリスト教はユダヤ教の冒涜者である、

 

というのがユダヤ人の常識となるわけですが、

当然、キリスト教社会ではこのような事を

述べれば死刑にもなり得る重罪でした。

 

逆にキリスト教に洗脳された

中世西欧文明の人々は自分たちの

救世主を殺した(売り飛ばした)

ユダの子孫こそがユダヤ人なのですから

ユダヤ人が殺されることに

何の憐憫もなかったわけです。

 

 

そこでキリスト教社会は

黒死病の原因をユダヤ人としたり、

キリスト教徒の子どもをユダヤ人が殺して

その血を儀式に使っているなどの

デマを横行させ、その度にユダヤ人は

犠牲となってきました。

 

 

 

そのような逆境の中で、ユダヤ人たちは

各地に同族ネットワークを作り、

相互に守り合う事でしぶとく生き残ってきました。

 

中には中世から金融業で富裕層に上り詰める者もおり、

貧しいユダヤ人たちはその召使いになるなど

同族の中で互助関係が築かれていきます。

 

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近世になるとイギリスでも

ユダヤ人追放がクロムウェルによって解かれて

英国ユダヤ人社会が復活します。(十七世紀)

この頃から少しずつ社会的ユダヤ人差別意識は

薄まり、ユダヤ人が政治参加する事も可能となりました。

ユダヤ人にとってクロムウェルは大恩人なのです。

 

 

近世ユダヤ人は兵站業務や

東インド産ダイヤの輸入、

地中海産珊瑚の輸出、

あるいはロスチャイルド家(十九世紀)のように

銀行業とナポレオン戦争を契機とした

貿易などによって莫大な利益を上げるようになります。

 

この背景にあるのがやはり

ユダヤ人同士の各地のコミュニティであり、

その繋がりから独自の販路や情報を持つ事が

ユダヤ人商人たちの強みであったわけです。

 

 

なかでもロスチャイルド家は

世界屈指の財閥に成長し

現代の資本主義、

金融システムの設計者ともいわれています。

 

ユダヤ人は昔から金融と商業で成功してきましたが、

現代のGAFAを含む先進企業にも

かなりの割合でユダヤ系の人材や資本が

入り込んでいるのです。

 

また優秀な頭脳を持つ者が多く、

アインシュタインとオッペンハイマーも

ドイツ系ユダヤ人です。

 

ユダヤ人は元々最も優れた民族として

世界を導く役目があるとされ、

その自負の元に多くの功績を上げているのです。

 

(しかしこの二人はマンハッタン計画の直後に

広島長崎に原爆が投下されて以来、

核戦争に関与してしまったことに

生涯後悔していきます。)

 

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ユダヤ人の財力は中世、近世、近現代を

通して常に政治にまで影響力を与え続けますが、

歴史的に重要なのは戦争の際の資金調達に

ユダヤ人を頼る国が多かったことです。

 

日露戦争ではロンドンにて

戦費調達に困る高橋是清に資金提供したのが

ユダヤ財閥の一人、ジェイコブ・シフでした。

 

高橋是清はアメリカでの資金調達がうまく行かず

英国に渡り、ロスチャイルドには

資金調達を断られてしまうのですが

シフにより2億ドルもの資金援助を受けて

戦時国債を発行し、日露戦争に勝利する事が出来ました。

 

逆に言えば、この支援が無ければ

日本は確実に日露戦争で負けただろうといえます。

 

この結果、帝政ロシアは崩壊し

ロシア革命に繋がるのですが、

シフが日本に資金援助した理由は、

ロシアにおけるポグロム(ユダヤ人への集団殺戮)

への報復というものでした。

 

シフにとってユダヤ人迫害を政権維持に利用する

ロシアの悪逆は許しがたいものだったようで、

日本を「神の杖」とまで呼んで支援したのです。

 

 

ポグロムはロシア語で「破壊」を表す単語ですが

ロシアやドイツなどにおいて

主に1800年代~1900年頃まで続く

ユダヤ人排斥、暴力、殺戮などを示します。

 

その目的は帝政ロシアが

庶民の社会的不満の捌け口として

ユダヤ人差別へと誘導したことなのですが、

こうしたことはドイツでもヒトラー以前から行われ、

ヒトラーはそれを踏襲しつつさらに過激化させ

反ユダヤ人のプロパガンダを煽り

それによって自己の権力を得ていきます。

その結果起きたのがホロコーストです。

 

 

歴史的にホロコーストとは

1933-1945におけるナチスドイツの

計画的ユダヤ人迫害を指し、

歴史上最も苛烈な反ユダヤ主義の結果と

云われていますが、

 

実のところ、似たような差別や殺戮は

キリスト教誕生から2000年以上に渡り

ずっと行われ続けてきたことなのです。

 

 

ホロコーストにおいては

アメリカやイギリスを含めて

多くの国がユダヤ人の窮状を知りながら

難民を受け入れることを拒否し続けました。

 

難民受け入れが国内の失業率や情勢を

悪化させることを恐れたのです。

 

 

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ロシアやドイツなど各地でポグロムの被害に遭い

キリスト教から迫害され続け、進退窮まり

さらに海外に逃げ場を求めたユダヤ人たちは

シオニズム運動を強めていきます。

 

主はこう仰せられる。

「わたしはシオンに帰り、エルサレムのただ中に住もう。

エルサレムは真実の町と呼ばれ、万軍の主の山は聖なる山と呼ばれよう。」

— ゼカリヤ書 8章3節

 

即ちイスラエルの地に帰り、

そこで自分たちの国を再建する運動です。

(ただし本来はメシアが

イスラエルを再建するというのが

ユダヤ教の教義であった為、

ヤハヴェに背く行為だとしてシオニズムに

賛成しないユダヤ教徒も多かった)

 

結果的には

1897年に第一次シオニスト会議が行われ、

終戦を経て、

1947年に国連にてパレスチナ分割決議が行われ

1948年になってようやくユダヤ人は

自らの国、イスラエルを建国できる事となりました。

 

 

1945年にドイツが完全降伏し終戦すると

生き残ったユダヤ人たちは

70万人以上がイスラエルへと移住し

あるいはアメリカや他の国へと渡っていきました。

 

またそれ以前にロシアやドイツから弾圧されていた

ユダヤ人資本家たちはシオニズムと同時に

パレスチナの土地を買い占めており

移住の準備を進めていたのです。

 

またユダヤ資本から戦費を調達したい

イギリスに交換条件でイスラエル建国を

認めさせています。

 

 

 

こうしてようやく約束の地に帰ることのできた

ユダヤ人ですが、戦時にイギリスが

ユダヤ人にもアラブ人にも都合の良い

二枚舌外交をしていたことで

パレスチナ問題が勃発します。

 

ユダヤ人移住前に長らく住んできた

アラブ系住民には領土の43%しか与えられず

この事に激怒した為です。

 

結果的にアラブ系先住民であるパレスチナと

移住してきたユダヤ人国家であるイスラエルの間に

アラブ対シオニズムの民族対立が起こり、

成す術のない元凶のイギリスは

責任を放り出して撤退してしまいます。

 

こうしてパレスチナ紛争が今なお続きますが

ここでは財力のあるイスラエルが

概ね優勢であり、パレスチナ側に

難民や被害者が続出しているのです。

 

 

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こうして見ていきますと

宗教がいかに人間社会にとって

害悪でしかないのかがよく分かると思いますが、

俯瞰で見ますと老子や荘子は

キリスト教の成立などより遥かに昔から

世の真実を見極めていたといえます。

 

即ち、人間の物差しで決める尺度など

何の価値もないという事なのです。

死生観を含むのに、宗教性や

人間の作為を全否定する道教思想の在り方は、

ドロドロの宗教対立を繰り返す

西欧文明に対して、実に清々しいといえます。

 

 

 

現在、ロシアが

ウクライナをネオナチと呼んで

攻撃していますが、歴史に鑑みれば

反ユダヤ主義の悪行を行ってきた当事者である

ロシア民族が、そのような事を大義名分のように

口に出すのですから、実に

歴史を知らない恥知らずと言えるでしょう。