2日目。
誰にも邪魔されずにゆっくり眠る事が出来た。
朝の公園にはチラホラと人の気配があった。
朝の散歩を楽しむ老人の姿があった。
僕は公園の水場で顔を洗い、歯を磨いた。
寝袋を丁寧にたたんで丸め、袋に納め、出発の準備を終えると2日目のスタートを切った。
今日も快晴でとても気持ちが良かった。
僕が最初の野宿の場所に選んだ公園は恐らく、明石海浜公園魚住北公園という名の公園だと思う。
その公園がどこであれ、今となっては大して重要ではないが、気になって調べたら恐らくここだと思しき場所が見つかったので、記録のために書き記しておいたまでだ。
僕は自転車を漕いでいる最中、常に何か考え事をしていた。
あまりに長い時間を自転車を漕ぐ事に費やし、あまりにたくさんの事を考えたので、一体何を考えていたのかはほとんど覚えていない。
文章にしてみれば一瞬だが、1日に何時間も、それも何日も何日も自転車を漕ぐのは、やってみた者にしかわからない達成感や喜びもあるが、苦しみや苦労もある。
この日もきっと他愛もない事を考えながら走っていたと思う。
前方右手になんだか気になる高台が目に入り、なぜそんな所に登ろうと思ったのか覚えていないが、わざわざコースをはずれて登ってみた。
きっと頂上付近が大きな岩になっていて、そこに立って見たい、そこからどんな景色を見が見えるか見て見たいと、好奇心が湧いたんだと思う。
昼過ぎだったのでここでしばし休憩。
そしてそこから約1時間半ばかり先に進み、楽しみにしていた姫路城に到着。
今回は昼の移動なので観光地を巡る事ができる。
横浜から京都の時は、ただひたすらに一刻もはやく目的地にたどり着くことを考えて走りつづけたが、神戸より西には行った事がなかったので、これはいい機会だと観光も兼ねての移動にした。
それにしても姫路城は立派だった。
行った時はまだ改修工事中で本丸に入る事は出来なかったけど、それにしても遠巻きに見る天守閣や周りの櫓や門、庭や石垣を見る限り、その規模や美しさは群を抜いていた。さすが世界遺産。
僕はこれまで難攻不落と言われ、江戸城がモデルにしたと言われた小田原城、それから大阪城、名古屋城、松本城など色んな名城を見てきたが、それと比べても圧巻のスケールで、本当にこんなものをよく人が造ったなとただただ感心してしまった。
東海林さだおという作家が彼の作品の中で、旅行に行くという行為は、観光地を巡ってがっかりするものである。いわば、がっかりを確認しに行く行為である。と言うような趣旨の事を書いていたが、言い当て妙である。
僕も色々な観光地に行ったが、大抵行ってがっかりして来た。
写真と違うことがあり、想像してたよりも大分しょぼい事があり、すぐ横に余計なものがあったり、色々な理由でがっかりする。
もちろん中には想像を超えて感動するものもあるが、圧倒的にがっかりすることの方が多い。
長い時間かけて出向き、なーんだ、こんなものか。と言って、2〜3分で飽きて帰るのだ。
しかし姫路城は違った。
先にも述べたが、圧倒的なスケール、美しさ、雄大さに見惚れてしまう。
立ち尽くしてしまう。
世界中の建築物オリンピックみたいなものがあったとすれば、間違いなく日本代表に選ばれるだろう。
あ〜凄いなーかっこいいなーと、余韻に浸りながら、場内で催されていた盆栽展を眺め、盆栽はそれ1つの中に宇宙があるのねーすごーいと、感心し、隣接していた動物園で雉のオスの美しさに驚いて、姫路城を後にした。
その後一体どこまで行き、夕食は何を食べ、どこで野宿をしたかは一切記憶にない。
もしかしたら、物凄い田舎の小さな公園のベンチで寝た記憶があるので、それが2日目の寝床だったかもしれない。
でも記憶が曖昧だ。
もしそうだとすれば、湿度の高い静かな夜だった事は覚えている。その公演に辿り着いたのはよるの10時を回っていたと思う。
僕は大体どんな所でもどんな環境でも眠れと言われれば眠れる体質なので、その点野宿向きだったのかもしれない。
この日も相変わらずぐっすりと眠る事が出来た。
朝眼を覚ますと、早朝にもかかわらずと言うか、早朝ならではと言うべきか、ゲートボールに集まったご老人達が早くも公園に集結していて、怪しいものでも見る目で僕を見ていたので、逃げるようにそそくさと公園を後にした。
そんな記憶が残っている。



