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これは「上」の巻です。


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「太平記」は言わずと知れた、戦記文学の最高傑作とでも呼べる、中世の古典文学で、後醍醐天皇の即位から、室町幕府三代将軍の足利義満の就任で幕を閉じます。



その最後の文章が「めでたいことであった。」と言う、なんとも皮肉に満ちた言葉で終わっています。「太平記」どころか「戦乱記」 とでも呼ぶべき内容になっています。



その古典文学の「太平記」を、1995(平成7)年6月に中央公論社から、何人も5のマンガ家や劇画家により作画され、それが文庫化されたのが本著です。



他のシリーズとしては、「古事記」が石ノ森章太郎氏、「源氏物語」が長谷川法世氏、「平家物語」が横山光輝氏が執筆しています。



この「太平記」3巻の分け方は、ほぼ原本の「太平記」第1部から第3部通りになっており、北条高時がイラストが描かれている「上」では、後醍醐天皇の即位から、鎌倉幕府の滅亡までを、「中」では、「建武の新政」から湊川での楠木兄弟の自害に至るまでを、「下」では、叡山の攻防から、三代将軍義満の就任までを描いています。



ほぼ源文の「太平記」に忠実に描かれていますが、特に後醍醐天皇の寵姫の阿野簾子を、もう一人の主人公として描いています。「太平記」は彼女の野望達成のプロセスとして描かれています。



特に吉野行宮での、後醍醐天皇の崩御場面では、天皇の遺言を聞き取るシーンなど、「本当かな?」と思われるシーンがありますが、これなど作者が上手く脚色したといえそうです。



阿野簾子の言いなりになってしまう、後醍醐天皇のある種の愚直さを描き、この南北朝の大乱の元々の原因は彼女阿野簾子の我が子を帝位につけたいと言う野心が、日本中を動乱の世にし、滅茶苦茶にしてしまったと言わんばかりです。



ある程度、建武の新政や楠木正成や新田義貞、足利尊氏についての知識があれば、楽しく読めるシリーズです。