こんな広大なひまわり畑の写真を見ると、私と同世代の方はソフィア・ローレンが主演した「ひまわり」という映画を想い起こすのではないでしょうか?

と同時にヘンリー・マンシーニが書いた主題曲が頭の中に聴こえてきますね。
ヘンリー・マンシーニについては、以前「ムーン・リバー」をめぐる消息をお伝えしましたが、この「ひまわり」のテーマ曲も彼の映画音楽で最も感動的な作品の一つだと思います。

 

 

『ひまわり』(I Girasoli, 1970)
 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
 主演:ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ

          リュドミラ・サベーリエワ
 音楽:ヘンリー・マンシーニ

 

特にラストの正にお涙頂戴の場面で流れるこのテーマ曲、美しくも切ないメロディーは、涙腺を完全崩壊させて余りありました。

 

 

↓こちらは、後年に再演されたオーケストラ・バージョン。ピアノはヘンリー・マンシーニご本人です。

 

 

 

さて、映画で映される広大無辺なひまわり畑や「戦没者の丘」のシーンは、ウクライナ(当時のソ連邦)で撮影されたものということで、最近はウクライナ戦争がらみで話題に上ることも多いようです。
以前は、主要ロケ地はウクライナ南部のへルソン州だと言われていたのですが、最近NHKが現地取材した結果、中部のポルタヴァ州にあるチェルネーチー・ヤールという村だったことがほぼ特定されています。

 

 

現ウクライナは、第二次大戦の東部戦線の戦場になり、ナチスに加担したイタリア軍の将兵も多数戦死しあるいは捕虜になったわけですが、映画製作当時のソ連は、実際の戦地での虐殺行為等を詮索されたくないがために、撮影場所を南部へルソン州と偽って伝えてきた節があるようです。

あるいはソ連当局は、この映画を見て「私の夫も現地で生き延びているかもしれない」と、行方不明者の家族がイタリアから押し寄せるのを危惧した、という説もあります。
いずれにしても、ソ連側は「戦没者の丘」のシーンなどのカットを求め、デ・シーカ側がこれを拒否したため、ソ連での上映はかなり遅れたようです。

 

まあ、そんな政治的な問題は抜きにしても、映画自体は王道の恋愛悲劇。環境によって引き裂かれる「ロミオとジュリエット」的な悲劇に、一種の三角関係を絡めたストーリーは後の小説や映画にも影響を与えました。
ヘンリー・マンシーニといえば都会的で洗練された作品が多いですが、やはりイタリア系移民の子です。実はこうしたニーノ・ロータばりの湿っぽい悲恋チューンも得意なんですよねぇ^^

 

 

閑話休題・・・

ウクライナ戦争からネタを引っ張るのは本意ではありませんが、最近ウクライナがらみで取りだたされる曲がもう一つあります。

ここでやっと聖子ちゃんの登場です(ちょっとだけですが・・・)^^;

 

▼松田聖子/「花はどこへ行った」ほか(Y TAKAHIROさん動画)

 

「花はどこへ行った」(「花はどこへ行ったの?」という表記もあり)

原題:Where have all the flowers gone?

作詞:ピート・シーガー(後にジョー・ヒッカーソンが加筆)

作曲:ピート・シーガー

 

昔から有名な反戦ソングですが、最近ネット上で「この歌の原曲はウクライナ民謡」だというような記事が上がり、これに対してボッサクバーナさんが Twitterで、「それはちょっと違うでしょ」とツッコミを入れたんですね。

そのTwitterに私が上記の聖子ちゃん動画を付けてレスったんですが、まもなく私が(2度目の)垢バンになり動画も消えてしまったので、ここに再掲した次第^^;

 

この曲を書いたピート・シーガーは、「ミハイル・ショーロホフの小説『静かなるドン』に出てくるコサックの民謡の歌詞にヒントを得た」と言っているようです。

原曲の歌詞はこんな感じ・・・

葦の葉はどこへ行った? 少女たちが刈り取った
少女たちはどこへ行った? 少女たちは嫁いでいった
どんな男に嫁いでいった? ドン川のコサックに
そのコサックはどこにいった? 戦争に行った

 

シーガーは1955年にこの歌詞を踏襲して3番までの歌詞を書き、曲はアイルランド民謡などにヒントを得てトラディショナルな雰囲気の歌にしました。1960年に録音しましたが、その後しばらくこの歌は放置されていたようです。

この曲に物足りなさを感じたジョー・ヒッカーソンが1961年に、4番5番の歌詞を書き加え、現在流布している歌詞になったわけですが、「花→少女→兵士→墓→花」という円環構造にすることで「永久に終わることのない戦争」というメッセージ性が一段と濃くなりましたね。

1961年のキングストン・トリオを皮切りに、ピーター・ポール&マリー、ブラザース・フォアなどが歌い、折しもベトナム戦争に突入していったアメリカにおいて反戦ソングの定番になっていきます。

 

▼Pete Seeger

 

▼The Kingston Trio

 

▼Peter, Paul and Mary

 

▼Marlene Dietrich(ドイツ語)

 

▼忌野清志郎(日本語)

 

 

今日は以上です。
私はネット上でのポリティカルな発言は極力控えていますが、先日「ヘルソン市開放!」のニュースを見て、このエントリを思いつきました。
映画「ひまわり」の広大なひまわり畑の下に眠る夥しい兵士の死体と「花はどこへ行った」の歌詞が私の中で完全にリンクしてしまって、この二つを並べてみたくなったのです。
聖子ちゃんとはほとんど関係ない話に終始してしまい、ごめんなさい^^;

ではまた~パー

 

(追記)

fukapukaさんからコメントをいただいて思い出したんですが、聖子ちゃんで「ひまわり」といえば「ひまわりの丘」がありましたよねぇ。心に沁みる名曲です。

遅ればせながら上げておきますね。

 

▼松田聖子/ひまわりの丘(2017年)