先日、やっと観てきました。

 
映画「ブレードランナー2049」。
 
IMAX3Dで観たので、迫力があり、あの世界に思いっきり入り込みました。
 
一作目の古い「ブラードランナー」を観ていない方も引きこまれてしまう、面白い映画だと思います。
 
その第1作めのブレードランナーは、1度観たら忘れられない映画でした。
まだ若かった私は、魅せられてしまったと言っても過言ではないと思います。
 
その後、作詞家になり、ブレードランナーのテイストを入れて創った作品があります。
中森明菜さんの「TATTOO」です。
 
あの歌詞は、「ブレードランナー」のイメージと、あの当時の近未来のイメージを投影して作った作品です。
 
それは、以下のような経緯からでした。
(前にも書いたことがあるエピソードなので、重複している部分もありますが)。
 
私はその頃、まさに駆け出しの作詞家でした。
 
でもどうしても、一世を風靡していた魅力的な中森明菜さんに歌詞を書いてみたくて、トライさせて頂ければと、当時在籍していた事務所のマネージャーにアポを取ってもらい担当のディレクターさんに一緒に会いに行ったのです。
 
 
その時、持って行った作品は、古語を使って書いてみた、大正ロマンをテーマにした和テイストの歌詞でした。
 
お会いした担当ディレクター、Fさんは、その和風な作品を面白いねと言って下さり、その後、明菜さんの新曲の作詞にトライさせて下さったのです。
 
がっ、しかし・・・。
 
時を置いて二回、ボツりました。
 
駆け出しだけあってボツには慣れていたものの、当然期待もしていたので凹まなかったと言えばウソになります。
 
そんなこんなの後。
 
時を置いて、新たに面白いコンセプトをいろいろ考え抜きました。
そして、今度は一人でアポを取り、レコード会社に伺い、歌詞ではなく企画を見て頂きました。
それは過激な切り口の、強くてセクシーな女を歌う新しい明菜さん像を想定したコンセプトでした。
 
するとディレクターのFさんが、今までにない面白いコンセプトだと認めて下さり、このテーマに、「近未来のブレードランナーの世界観を入れてみたら?」というアドバイスを下さったのです。
 
それはとてもすごいアイディアだと思いました。
 
映画の近未来の映像を思い浮かべて、さらにまたコンセプトを練り直し、そして、タイトルを決めて、また、一人で会いにいきました。
 
(その頃はメールなどなく新人なら作品を持参するのが当たり前でした。やっとFAXが出始めた時代でしたから)
 
そしてコンセプトを見たFさんは気に入って下さって、実はいま、このコンセプトに合う曲がある、とおっしゃって、デモテープを私に渡して下さったんです。
 
 
それが「TATTOO」という歌になった曲の、インパクトのあるデモでした。
 
 
頂いたデモに書いた歌詞はその後、何度も手直しを入れて、結果、詞曲セットで明菜さんの新曲として採用されたわけです。
 
 
「TATTOO」とは、いうまでもなく刺青のことです。
今はファッションになりオシャレで入れている方をよく見かけますが、あの頃は、どちらかというとコワいイメージでした。
 
でも、「ブレードランナー」には日本が出てくる。それも混沌とした、極彩色のイメージが私の中にはありました。
そこに、アンドロイド、レプリカント、といったワードを入れて、新鮮で印象に残る世界を構築してみたのです。
 
 
歌の中では、強くてセクシーでたとえようもなく魅力的な女が、弱い男たち、遊び人で軽いだけの若者たちにメッセージを突きつけます。
 
心に、魂に、愛という消えない刺青を入れろ。
ロボットや人造人間じゃない、血の通った強い男が真の愛を魅せてくれたら、私だって、おちてあげるわ。
 
と。
 
 
あのときの新曲ポスターや、オリコンの裏表紙に掲載されたコピー。
 
「未来永劫、愛しなさい」
 
だったと思います。
 
 
「TATTOO」は、私にとってそんな強い思いと情熱と、想い出が詰まった作品です。
新人だった私は、どうしても、何が何でも、という気持ちがあり、根性もあったと思います。
 
 
今も結構、根性と情熱はあると思いますが、あの頃ほど、しつこくはないかもしれません。
正直、自分でご連絡したり、売り込みに行ったりなどはほとんどしなくなりました。
 
 
でも、新鮮な作品や、心に響くいい作品をたくさん作り、ファンの皆さまに届けたいという強い思いは同じです。
 
 
 
「TATTOO」が採用された1988年から長い時がたち、映画も、新しい「ブレードランナー2049」が制作、公開されました。
 
 
 
あの時の興奮、新鮮な気持ち、強い情熱を忘れずに、新しい歌を創り出すためにさらに精進したいと思います。