なのに何故だかホッとしている僕がいるんです。

彼の作品を“文学”とひとくくりで評価されてしまったら、僕は“文学”を一生理解できないままになってしまいそうな気がする。
数ある文学作品を一つ一つ理解する必要はないと思うけど、「羊をめぐる冒険」に出会ってからはそれまでの僕の頭の中にある“文学”っていう概念とは一線を画しててちょっと違った感覚を得たんです。
奇想天外なストーリーとか汗の臭いがしない登場人物の行く末とかは比較的どっちでもよくて、ほんの一文で読者引き寄せる情景描写や、描かれた場面が頭の中にずっと残り続ける不思議な感覚は彼の文章でしか味わえないから。
筋書きを楽しむのではなくて、文章を楽しむ感覚。
で、気付かぬうちに物凄い集中力を要していて、読み終わると右脳がいっぱい動いていた後みたいに脱力してしまう感じは独特なんです。
シンプルなのに難解。
そもそも今さらノーベル文学賞を貰う必要はあるのかね?
下馬評で示されてる様に彼は十分に評価されてると思うし、貰ったところで彼自信や彼への評価は何も変わらない気がするんだけどな…。