千代の富士は貴花田に破れ、
江川卓は小早川にストレートをスタンドに運ばれて、引退を決意したという。
時に名選手引退の影にはそんな世代交代の美談が付いて回る。
じゃあ、子供が親を越える時はいつか?
背が抜かされた時か?
腕相撲で負けた時か?
82センチを超えるシーバスを釣られた時か?
カイのテストが終わった日の夜、いつものごとく夕飯後に水門へ出撃。
前回完敗しただけに絶対負けられれねぇ!
という表情は一切出さず、
「82センチ抜くけぇ」
カイの挑発にも、
「抜けねぇようなサイズ釣ったるわ」
と余裕を見せつつ釣り開始。
でも・・・絶対負けられねぇ・・・。
潮が引いてて浅いからまだいいべ、と余裕の侍ジャパン速報チェック。
お、4-2で勝っ・・・
「きたぁ!!」
マジか!?
70オーバーを手前まで引き寄せるも、痛恨のバラシ。
ヤベェ・・・何度も言うけど、絶対に負けられねぇ。
焦って投げ始めると、再び
「きたぁ!!」
今度はデカイ。
ドラグ鳴りっぱなし。
寄せても走られるが、慎重にランディング。
でかっ!っーか、太い。
メジャーあてると・・・
・・・87センチ・・・
カイ、自己ベスト更新に興奮。
釣り仲間に電話かけまくり。
焦って攻めるも、2個ルアーをロスト、リーダーまで失い
・・・戦意喪失。
負けられない戦いで、負けた・・・。
ついでに、42歳釣り歴30年でシーバスの自己記録82センチを、
14歳、釣り歴10年、小遣いで買った3千円の釣り竿の小僧に、
予告通り抜かれた。
もう認めよう、参ったよ。
この連敗だけじゃなく、バス釣りでも今年は分が悪かった。
江川も小早川の打球を見上げながら、こんな気持ちだったかもしれない。
(間違いなくそんなことはないでしょう)
えー、でも引退はしません。
えっ?いつまで現役にこだわるか?
投げられなくなるまでよ。
肩は消耗品・・・。
そしてこれからも仁義無き戦いは続く。