15年前の春、まだ横浜に住んでいた頃。
大きなお腹を抱えたジュンと、横浜スタジアムにカープ戦を見に行った。
暖かい陽気のデーゲーム
スタンドが青く染まった中、前の席には必死でカープを応援しているお父さんと12,3歳の息子が座っていた。
試合は1点差でベイがリードしてむかえた9回表。
カープはツーアウトながら2,3塁で逆転のチャンス。
バッターボックスは前田智徳。
親子のボルテージ最高潮。
しかし、サードへのハーフライナーで試合終了。
「なにやってんだよ、前田ぁ!」 と父、
「もうクビだぁ!」と息子、
「もうええ加減にしんさいや!何度も何度もチャンスつぶしてからに、ホンマ。前田も猛打賞か知らんが、ここで打たんでどうするんか!」と・・・ジュン
その時、改めて意識するようになった、
カープファン、恐えぇ・・・
じゃなくって、前田の存在。
15年の歳月が流れ・・・
今日、真っ赤に染まったマツダスタジアム。
そのバッターボックスには、たくさんの歓声とフラッシュを浴びた前田の姿。
後ろの席では青年3人組が、
「まえだぁ!まえだぁぁぁ!」
と号泣。
前の席では一眼レフをかまえたおじいちゃんが、白いハンカチで何度も何度も涙を拭いていた。
さらに9回表、サプライズ守備。
隣のおばさん達は、
「えっ、守るん?何年ぶりよ?ちゃんとフライとれる?」
「えー、最後の最後にエラーなんかせにゃあいいが・・・」
と、我が子の試合でも見てる心境。
15年前のハーフライナーに文句言ってたジュンも、平田の必死な流し打ちに笑いながらも泣いている。
15年前ジュンのお腹の中にいたカイは、こっそりとドラゴンズ勝利を喜びながらも最後の挨拶に耳を傾けていた。
そして15年前、横浜スタジアムで必死に応援していた親子も、宙に浮いた背番号「1」をどこかで見ていることだろう。
打てても打てなくても、出てくるだけで揺れるような歓声が沸く。
こんなにファンから愛される選手、そして愛するファン。
ふと頭をよぎった。
金本も、最後までカープにいたらこんな風に引退できたんじゃないか・・・。
とにかく、長い間お疲れさまでした。
