サンフランシスコへ行くにあたり、カイには申し訳ないけど一日だけ部活を休まなきゃならなかった。
「ちゃんと先生に言うんだぞ」
「昨日言った」
「なんか言われたか?」
「『ウソつけ!』って言われた」
どうやら信じてもらえず、部活の仲間が「本当なんです」って証明してくれたらしい。
普段どんな行動してんだよ!
いや、でも今までも似たようなことが何回かあった。
中学に入って間もないころの社会の時間。
県で分けられた日本地図のプリントを渡され、
「行ったことのある県を塗りつぶしてください」
と言われたから、カイは北海道から一気に全部塗りつぶそうとしたら、先生に
「ふざけないで!」
と怒られたらしい。
まわりの友達が「本当にカイは全部行ったんです!」って弁護してくれて容疑がはれた。
普段から雑なことばっかりやってるから、そういう風に思われンだよ!
さらに小学校の夏休み、足摺岬で「ジンベイザメ」と泳いだことがある。
学校が始まり、
「ジンベイザメと泳いだって友達に言った?」
「言ったよ」
「なんて言われた?」
「信じてもらえなかった・・・」
あれ?
必ずそういう時、
「悪いなぁ・・・一般ウケしないようなことばかりさせて・・・」と謝る。
「もう慣れたよ」とカイもあまり気にしてない様子。
小学校の卒業式。
式の一週間前くらいにカイがあらたまってお願いにやってきた。
「春休みに『祇園のイオン』に友達と行きたいんだけど、いい?」
2個先の駅にあるショッピングモール。
「はぁ?イオンに行ってどうすんだよ」
「いや、小学校最後の思い出に」
「思い出作りにイオン?なんじゃそりゃ?それなら下関くらいまで行って来いよ」
「学区外にみんなで行きたいんだって」 とジュンがフォロー。
「どうせ学区外なら下関まで行っちゃえばいいじゃん!ほら水族館だってあるし。祇園なんてチャリでも行けるじゃねぇか」
こりゃあ話にならねぇ・・・と思ったのか、カイはそれ以上言わなかった。
そして卒業式が終わり、校庭で写真を撮ったり、先生と話したりしている時。
カイ達数人が保護者に頼み込んでる。
「カイ、何やってんだ?」
「イオンに行くことをお願いしてる」
「ああ、あれか。ダメって言うのを無理やり誘うなよ。許してくれる人だけで行けよ」
「みんなダメだって」
「へ?」
「俺以外みんなダメだって」
「・・・た、頼むから『下関まで行って来い』って言われたなんて言うなよ・・・」
「わかってる」
信じてもらえないのは、親のせいかもしれません。