コンビニで用を足し、札幌へと長距離ドライブをして、帰路につくところであった。
そのコンビニのネオンの下で、僕は源ちゃんと出会った。
ブーンと飛んで来た源ちゃんのことを、最初、僕は、クワガタだと勘違いした。
近くに寄ってよく観察すると、はたしてそれは、4㎝級の源五郎であった。
北海道では、今や絶滅寸前の貴重な命である。
それを、コンビニの紫外線燈は、容赦なく焼き殺す。
夏になると、あちらこちらのコンビニで、ジュッという不気味な音と共に、いろんな命が奪われている。
僕は、しばし考えあぐねた末に、ゴミ箱から適当なサイズのペットボトルを取り出し、トイレで水を注ぎ、水生昆虫である、源ちゃんを保護した。
車で3時間も揺られた源ちゃんは、家に着いた時には、流石にグッタリした様子だったが、その後、メダカをしっぽだけ食べるという食通ぶりを発揮して、元気に泳いでいた。
ところが、それ以来、一切の食物を口にしないのだ。
何日も、何日も。
とうとう、僕は、そんな源ちゃんを不憫に思い、自宅近くの西岡水源池に解放することを決意した。
今度は、灯りに近づくなよ…。そう呟いて、僕は、できるだけ湖の中心に向けて、源ちゃんを放り込んだ。
ゆっくりと、放物線を描いた源ちゃんは、頼りなく水面に浮かんでいた。
「しまった!源五郎は、水草に掴まらないと、下へは潜れないんだ!」
そう思ったが、遅かった…
源ちゃんの左手から鴨の群れが近づいて来た。
源ちゃんが水面に落ちる音と波動を聞きつけたのだ。
僕のからだは凍りついた。
次の瞬間、先頭を泳いでいた鴨は、源ちゃんをくわえると空中にかざした。
「ヤメロー」と僕は叫んでいた。
もう、僕は、4㎝級の源五郎を目にすることはできないと思う。
北海道は、開発が進み、自然の池や沼などもうほとんどないのだから。
嗚呼、何をやっているのだろう…
後日、友人にその話しをすると、彼いわく「そりゃあ、源五郎じゃなくて、ガムシだな、北海道の田舎町なら、まだけっこういるよ」…だそうな。
なんだかなぁ…
みんな、むかしは、昆虫少年だったんだな。
