ケイトとドールがエレナ女王の部屋を出る時、
とても満足した表情のエレナが封書を差し出した。
ケイトとドールに一通ずつ。
そしてドールはキャサリンの分も受け取っていた。
ケイトが怪訝な表情で封書を手に取り、
口元を蝋で封じた封緘印を見て顔色が青ざめる。
国令印だぁあーっ!?
国令印とは、
国から国民に対する依頼の書面を封じた印を指す。
国からの正式依頼なので、
当然無下に断る事も出来ない。
ケイトに言わせれば強制命令書に等しかった。
この封書を手渡す事が呼び出した本当の理由ね!
ケイトがギロリとエレナを睨む。
「……今度は何?」
「これこそが私の大本め……いえ、
計画の要なのですわ。
お姉様と妹様、
そしてドールちゃんには是非とも
“ご同行”頂きたく。」
今、大本命って言おうとしたわよね?
……ちょっと待って。
えぇえ? ご同行って何よ!?
「まさか、女王のマハラティーニ訪問に
あたしたちも同行しろって言うのー!!!?」
バーバラお婆ちゃんの言う犯人捜しをするには
都合が良い展開だけど……
この女王、もしかして
あたしの仕事の内情まで把握してるんじゃ……?
あーっ、もう!
「わーかったわよ!!
行くわよ、行けばいいんでしょ!!!」
ケイトの荒れた声の後、
エレナ女王は本音を小声でポロリ。
「遂に夢にまで見たお姉様とのラブラブな旅行が
現実になりますわ!」
「…………。」
ケイトにとっては、夢は夢でも悪夢であった。
ケイトがエレナ女王と仲良く(?)お茶会して
いた頃、忍者ロバスの部下ヤタとミズは
王宮護衛団の出入国管理事務局にいた。
ヤタが玩具屋に行く少し前のお話である。
そこで二人はリストを見て唖然とした。
名前:エギル
種族:魔界人
年齢:30
職業:武具商人(主に刀剣武器)
技能:魔法使い、封魔術師、武具鑑定士
「馬鹿正直に記入して入国したというのかや!
……しかし魔界人というのは違和感があるの。
あやつらの男性平均身長は3メートルと
デミ・ジャイアント並みじゃ。
出会ったあやつの身長は160くらいに見えた。」
「ヤタの言うことが本当なら、
魔界人の奇形児かハーフな魔界人
の可能性もあるわね。
そもそも数は少ないけど、
魔界人は敵対しているわけじゃないし。
個人で経営している武具商人も珍しくない。
現時点で
暗殺されるような理由も特に無いんじゃない?」
「むう……確かに
仮に出会って問い詰めても
はぐらかされるのがオチじゃの。
やはりあやつが手に入れた巨大ゾンビ2体を
悪用する現場を取り押さえねばならぬか。」
ミズがゆっくりと立ち上がる。
「そっちはヌエに任せましょ。
あたしはロバスの旦那に合流するわ。
玩具屋に行って、何か分かったら教えてね。」
「うむ。
しかしヌエの居場所は……」
「大丈夫、あたしの方で把握できてるわ。」
そう言われるとヤタも立ち上がる。
「分かった。
ではアタシは玩具屋に行く。
それではな。」
ヤタはそう言って玩具屋に行き、
店主のリックから情報を得て、
今は冒険者ギルドに来ていた。
受付嬢に話を聞いているが、
やはり都市伝説な話の情報なんて
「うーん、
以前出会ったっていう冒険者さんって、
どこの誰だったのか全然聞こえてこない
んですよね。」
やっぱり無いに等しかった。
「ブラドという名に心当たりは?」
「男性の名では珍しくないですよ。
人間に限らず、ドワーフや小人族でも
聞いた事がありますし。」
「じゃよなあ……
なんでモグリで売買しとるんじゃか。」
このヤタの声に受付嬢は
『は?』
となった。
「あれ?
ヤタさん都市伝説の話って、
かじった程度の知識だったりします?」
「さっき初めて小耳にはさんだ程度じゃ。
モグリの理由まで話にあるのかや?」
「モグリの売買屋って盗賊だって噂ですよ。
捕まるのが嫌だからモグリしてるんだろって。」
「あー、なるほどの。
そういう理由なら納得するわ。」
武器商人のエギルとは
また違った意味で厄介な相手じゃな。
「だから夜中にしか現れんというのか。」
「しかも新月ですからねー。」
「新月か……」
確か今夜は満月。
次の新月まで半月も待つしかない。
ヤタはがっくりと肩を落とす。
「半月も待ってられんわ。
邪魔したの。」
「いえ、お役に立てず申し訳ないです。」
ヤタが冒険者ギルドを出ると、
近くの武具屋では朝過ぎでも活気づいていた。
普段ならもう冒険者たちは仕事に出ている時間。
何か掘り出し物でもあったのかや。
覗いてみると商品棚にはサーベル(曲刀)を
主体とした剣がいくつも飾られていた。
柄の装飾も凝っており、
これは目立ちたがり屋の戦士たちが
好んで買いそうに思える……んん!?
この刻印は!?
サーベルの柄尻には、
ブラドの名の刻印が刻まれていた。
- 前ページ
- 次ページ