冥教師ミレディの幻影が去った後、
ケイトたち4人はこのホームから入れる
地下通路に進んだ。
ポーラたち破封の陣が
地下鉄遺跡の調査してる話だけど、
ここ南西部はまだ手付かずみたいね。
西から調査進めているはずだから、
時計回りに北西から調査を進めているのかも。
西区の地下迷宮からホームに着いた時は
地下6階だった。
レールはほとんど平坦だったから、
ここもそれなりの深さなはず……
ん?何あれ?
通路を完全に塞ぐほどではないが、
ガラクタが山積みになっていた。
ポーラが見たら頭抱えそうね。
ドールがそれに近寄り目視確認。
「ケイト様、
これらは遺物などではなく、
ここ数年のうちに捨てられた物のようです。」
「え、わざわざこんな地下深くに来て不法投棄?」
言いながらケイトも目視。
「うーん、金物ばかりだけど
決まったゴミの日に出せる物ばかりみたいね。
こんなとこまで運んでくる方が余程面倒だわ。」
するとここでフィルが一言。
「もしかしたらゴミではないのかもしれないです。」
「……これらが?」
いやいや、どう見てもゴミよ、これ。
ほとんど金物だから鍛冶屋にでも持って行けば
そこそこの値段で売れると思うけど。
「人にとってはゴミですが、
光り物を好む魔物は
巣に持ち帰る習性があると聞きます。」
カラーン
一番上に積まれていた金属ゴミが
下に転がり落ちた。
そして突如、金属ゴミ全体が震えだす。
「皆さん、下がっていて下さい。」
フィルが龍牙の短刀を2本抜き両手に持った。
サイレンはケイトとドールを守るように
二人の前に立つ。
獲物を前に歓喜する魔物の気配と殺意が
突如として剥き出した!
ガラガラと金属ゴミが崩れ落ちて行くその中心に、
全身朱色の巨大な鳥が現れる。
全長3メートルはありそうだ。
ここの地下通路は幅広で天井も高い。
でも、だからって、こんな巨大な鳥が
どうやってこんな地下通路に!?
巨鳥は羽根を大きく広げた。
何かのモーションかも……マズい気がする!
「ドール!」
「はい!」
ケイトとドールは
マジックシールド(魔法の楯)を詠唱し発動。
その効果が現れた直後、巨鳥の羽ばたきが
突風を生み金属ゴミを飛散させた。
それらがケイトたちに襲い掛かる。
「くっ!」
辛うじて防ぐとフィルの剣戟を羽根で弾き、
続けざまに炎のブレスを周囲に吐いた。
「散開!」
ケイトの声に合わせ、皆が散り散りに回避。
巨鳥を取り囲む様に4人はバラバラになった。
……いや、バラバラにされた。
巨鳥は炎のブレスで仕留めるつもりはなく、
パーティをバラバラにさせてから
各個撃破するつもりなのだ。
この巨鳥、対集団戦に慣れている!
そんなケイトの不安な思いをよそに、
サイレンは冷ややかに笑みを浮かべていた。
「……なるほど、コレがそうでしたか。」
え、今の台詞はなに?
まるで巨鳥の存在を知っていたかの様な……
ケイトの視線を気にする事なく
サイレンは巨鳥の前に立ち、
ゆっくりと歩いて間合いを詰めていった。
すると一気に周囲の気温が下がっていく。
ケイトはゾクリとした。
まるでスーレンの様な巨大な冷気……!
(※「禁断の果実」参照)
周囲に散らばった金属ゴミが床に凍り付く。
後はフィルが襲撃すれば……と思っていたが、
ここで巨鳥の両目が赤く光った。
「ゲイズ(睨み)!?」
敵の神経を一瞬で硬化させ金縛りにする
魔物特有の攻撃。
4人全員レジスト出来たが、
全身から冷や汗が流れる。
レジストして、この精神ダメージ!?
なんなのコイツ、
まるで地下下水道の主みたいな……!
ケイトたち4人が怯んだその時、
巨鳥は高らかに声を上げて
一瞬にして消え去っていった。
ケイトが呆然と立ち尽くす。
「まさか、転移の魔法!?
あの巨鳥、いったい何者なの!?」
ケイトの叫ぶような声にフィルが応える。
「ケイトさん、
アレは地下鉄遺跡の守護獣です。」
「守護獣……?」
「ポーラさんの北西区の調査では
真っ白い虎が襲撃してきたそうです。
ただあちらでも倒す事は叶わず、
今回の様に逃げられたと聞いています。」
「まさかフィルとサイレンが
私のところに来た目的って……」
「ええ、
ミレディへの牽制もあったんですけど、
何処に出現するか不明な守護獣から
守るようにと言われてたんです。
ただ100%遭遇できるわけではないので、
余計な気をつかわせるのもどうかと思い
黙っていましたけど。」
フィルの声の後、
サイレンはガッカリした様子で
「私としては倒したかったんだけどね……
制限時間でもあるのかも。
白い虎も優勢なまま逃げたって話だし。」
「地下下水道の主みたいに
近付かなければいいって事?」
「たぶんね。
仮に東方の国に伝わる四聖獣だとすれば、
少なくともあと2体いる事になる。」
「あんなのがあと2体もいるの!?」
「元々この地下鉄って極東からきた男が
設計したんでしょう?
なら、その男の国にまつわる何かがいても
不思議ではないでしょうね。」
「移動手段を作っただけじゃなかったって事?」
「……それは分からない。
ま、ポーラたちが調べるでしょ、そこは。」
ポーラも大変な仕事してるわね。
杖の仕事を私に丸投げしたの分かる気がするわ。
分かりたくないけど。
そう思いながらその場を通り過ぎた4人の前には、
大きく太い手すりの付いた上り階段が見えていた。