盛岡食いしん爺日記
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先日、五所川原の立佞武多に行く途中、黒石に寄った。
遅めのランチは、手打ち蕎麦や「金の銀杏」。
黒石市の中町こみせ通りの一本東の道にある。
大きな銀杏の木が目印。
Bill Evans Trio - Someday My Prince Will Come (Official Visualizer)
いつみても見事な銀杏は、実が盛大に落ちる。
一度だけ見たことがある。
秋の空に向かう銀杏の葉は黄金色。
風に吹かれて舞い落ちる。
その時、秋の陽射しを浴びて金色に見えた。
入口に向かう路は金色の絨毯。
店の名前の由来が分かった気がした。
店の中はカウンターと窓際に小上がり。
木が多く使われ、温もりが感じられとても落ち着く。
ヒバだろうか。
名前の由来も使われている木材の事も尋ねた事がない。
いつも食べるのは「天せいろう」。
注文し、蕎麦茶を飲みながらしばらく待つ。
初めてカウンター席についた。
チラチラと店主の仕事ぶりを見る。
天婦羅の準備。
ころもつけて揚げ始める。
集中して丁寧な仕事だ。
金の銀杏は、十数年前に偶然見つけて入った。
あの時、中町こみせ通りを歩いていた。
だから、こみせ通りの方から入ったと思う。
大きな銀杏の樹の下に「金の銀杏」の看板と店構えを見てピンときた。
予想は当たりだった。
天婦羅が出てきた。
以前に比べると薄衣になった気がする。
食材の美味しさを引きだしている。
真っすぐの海老天もプリプリだ。
茗荷など野菜も美味しい!
初めて来た時から蕎麦を置くと店主は、
「始めはつゆをつけずに食べてみてください。」と言う。
「写真を撮っていいですか?」
「はい、でもうちの蕎麦はのびやすいのでなるべく早く食べて下さい。」
「勿論、そうします。」
と答えてファインダーを覗くと、茹でたての瑞々しい蕎麦。
手早く撮って箸を持つ。
何もつけずに口にする。
十割蕎麦で繋ぎを使わない蕎麦は風味よく、ほのかな甘味。
美味しい!
何度か何もつけずに食べてから、つゆにちょこっと浸す。
昔、中学生の頃、
岩手の県北、今の八幡平市で2年近く暮らした。
当時は安代町と言った。
中学を卒業して高校は花巻へ。
父を残して家族は新しい家に移った。
週末に父は帰って来た。
あの頃、大晦日に食べる年越し蕎麦は、
寒さ厳しいあの町で作った手打ちの蕎麦。
父が持って来るのだ。
蕎麦粉だけの蕎麦は、さっと煮てささっと食べる。
そうしないと溶けてしまう。
親戚も集まり、みんな夢中で食べた。
もう、半世紀も前の事だが、あの蕎麦の味は忘れていない。
金の銀杏の蕎麦には、
何かあの蕎麦を思い出させるものがある。
店主の食べる人への想いが詰まった蕎麦は、
みるみるうちに無くなる。
風味、食感、喉越しと素晴らしく、
口に入れるたびに美味しいと思う。
年に一度の私の恒例行事。
今年も存分に味わった。
美味しかったと、店主に告げ、五所川原の立佞武多へ向かった。
いつか冬の雪深い中で「鴨汁せいろう」を食べてみたい。
黒石市
手打ちそばや金の銀杏