盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意>
岩手山麓の網張温泉の「ありね山荘」が5月半ばに再開したと聞いた。
冬に源泉から引き込むパイプなどが雪崩で壊れ、
日帰り温泉の山荘は閉まっていた。
復旧は雪融けを待っていた様だ。
待っていた。
聞いたからには行かずにいられない。
雫石の盆地から山懐に走る。
大きくカーブを曲がるたびに標高が高くなり、どんどん春が逆戻り。
山荘まで数分の辺りは、まだ樹々は芽吹いたばかり。
標高は600メートルを超えるらしい。
夕方の傾いた陽射し。
燦燦と降り注ぐ。
風ひとつなく静かだ。
こんな風景を見て温泉で四肢を伸ばし、
蕎麦かラーメンを食べたら、素敵な夢を見るかも。
But Beautiful Tommy Flanagan Trio
山を下り、雫石の盆地を走り回って
盛岡の街へ戻る頃にはとっぷりと暮れていた。
暮らす人は「桜山」と呼ぶ一角へ。
さて、どこにしようかと歩いていた。
「千葉さん!」と背後から声。
振り向くと、知り合い。
残業前の腹ごしらえだと言う。
「どこに行くの」と聞くと、
角の白乾児(パイカル)を指差す。
一緒に入った。
もう70年を超す老舗の町中華。
サラリーマン時代は昼に夜にと通った。
昔は2階にも席があったが、今は1階のカウンターだけ。
曇りガラスの戸を開けると目の前に椅子が並ぶ。
丸い椅子に腰かけると、
「いらっしゃい」とマスター。
材木町の土曜の夕方に開かれる「よ市」に出店してもらっている。
一応、実行委員会のスタッフであり、
出店者には感謝の思いがあるのです。
ロードサービスのジャフの会員カードを見せると、餃子が1個増える。
その分、隣にあげた。
私は餃子と半チャーハン。
人気の餃子だ。
ふっくらとしてジューシーな餡が詰まっている。
安定の味、美味しい~
熱々の鉄の中華鍋で炒められたチャーハン独特の匂いが食欲をそそる。
半チャーハンとはいえボリュームは十分。
食べ始めるとレンゲがとまらない。
急ぐつもりはないのに。
一緒に入った人が「いつもブログ見てます」。
こんな時、「あっ、どうもありがとうございます。」としか言わない。
何せ、値段も書かないし、味も詳しく書かない。
ただ写真は見た感じが伝わる様に心がけているつもり。
カメラを向けていると、興味津々で見ている。
「撮るの、けっこう早いですね」
「まあ、なるべく、ありのままに写す、それだけ」
「なるほど」
話は仕事のことになり聞き役に回った。
色々と大変らしいが、決して忙しいとは言わない人だ。
その人は五目ビーフン。
よく来ていると、色々な物を食べるのだろう。
美味しそうだ。
店の人が気を利かして器を出してくれた。
お陰で少し分けてもらい味わうことが出来た。
ササっと食べて席を立った。
会計して外に出た。
一緒の人は、この春、管理職に昇格した。
別れ際、「また、一段、孤独の階段を上ったね」と言うと、
「なるほど、うまいこと言いますね」と苦笑い。
煌々と明りの灯る建物に急ぎ足で歩いて行った。
きっと美味しいビーフンが今夜の仕事を支えてくれるだろう。
背中に向かって「ほどほどに頑張れ」と呟いた。
大学時代の友達の手紙の一文を思い出した。
「私がこの会社で定年まで勤めあげたのは
入った時の上司や仲間と相性が良かったからだと思う。
意外にそんなことで決まる様な気がする。」
歩いて行った人の先輩であったことが少しはよかったと、
勝手に思うことにした帰り道。