盛岡食いしん爺日記
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夜になって鮨を食べたいと思った。
そんなに粘着的な気質ではないはずだが、
頭から「鮨」が離れない。
しかし、明日まで仕上げなければならない事がある。
そうだ、テイクアウトにしよう。
千代寿司に電話した。
「30分後には大丈夫です。」
となれば30分仕事に集中。
歩いて数分。
いそいそとオリを持って事務所に戻る。
ヤカンをガス台にのせ、
小さな蓋がピーピー鳴るのを待つ。
子どもの頃、父が酔った罪滅ぼしの様に鮨オリを持って帰って来た。
夕飯が済んでいたが歓声をあげた。
ああいう時の布巾を被せた父の夕飯はどうなったのだろう。
今の様に携帯もなく、家に電話もなかった。
父が突然、仕事仲間と飲むのは日常茶飯事。
待っているだけの母も大変だっただろう。
しかし、あまり困っていた顔の記憶がない。
ピーピーと鳴る。
お茶をたっぷり淹れた。
My Favorite Things · John Coltrane
丁寧に開けて綺麗な鮨を見る。
そうそう、目から美味しいと感じるのだ。
鮨は飯とネタのバランスが大切だ。
すんなり口の中で混ざる。
「う~ん美味しい!」
実は、上と並を頼んだ。
忙しくて昼ご飯を食べられなかった。
上鮨から食べ、次は並へ。
ふいに父と母の顔が浮かんだ。
「ひとり贅沢して」
「年をとっても利己的だな」
「そうよ、誰かにあげればいいのに」
並を開けようとしてチャイムが鳴った。
仕事の仲間が来た。
夕飯は食べたらしいが、2人で分けながら並を食べた。
「来てよかったなぁ~」
とお茶を飲みながら言う。
思えば、オリ二つを一人で食べるにはちよっと多い。
その人が来て、こちらも助かった。
「そのうち、千代寿司のカウンターで食べよう」
と、言い残し帰って行った。
さて、しっかり働いて小さな夢を叶えに行こう。
日々のちよっとした楽しみがあると、やる気も出る、出る。