盛岡食いしん爺日記
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中学2年生の桜散る頃まで生まれ育った家は、
岩手の南の一関市にあった。
釣り山公園という街を見下ろす丘。
住宅街から続いて麓から3段ぐらいに家が建ち並ぶ。
1段目は、数百メートルにわたって並び、
2段目になると、その半分。
さらに3段目には数件の家が並んでいた。
その一番上の北の端の家で育った。
母方の祖父が買い、私たち一家が暮らしていた。
高さはビルの5、6階はあり、
一関の街を一望できた。
母方の祖父は、一関の大水害にあっており、
高台にも家が欲しかったのかもしれない。
物心ついた頃から、
出かける時は階段を下り、
家に帰るには上るしかない。
幼稚園の頃、三輪車を持って下りて遊びに行く。
帰りは三輪車が重かった。
でも、それは当たり前だと思っていた。
中学生の頃、遊び疲れた帰り道。
自転車を坂の途中に置いてきたら、
思い切り叱られた。
仕方なく暗い中を下りた。
なんでこんな所に住んでいるのだろうと、
心細い街灯の下、ため息をつきつき自転車を押した。
大人になって思えば、
賑やかな商店街にも歩いて10分ほど。
街の真ん中の小学校にも遠くない。
春になると、
丘は桜の名所で庭にも太い桜が3本もあり、
裏の斜面いっぱいに山吹が咲いた。
自然豊かな中での暮らしだった。
そして、知らず知らずに下半身が鍛えられた。
春咲小紅 · 矢野顕子
桜の季節が近くなると、毎年生まれ故郷を想いだす。
散る頃、縁側にも舞い落ちた。
淡いピンクの雪の様に庭一面に降り積もった。
風が吹くと、空に舞う。
大人になって知った桜吹雪という言葉。
先日の午後、用事がすんだ帰り道。
曇り空ながら暖かい。
ひと休みしようと「チロル」に。
チロルといえば、
スプーンで食べるふわふわのチーズケーキ。
その前にピザトースト。
トーストにのる焦げ目のついたチーズはきつね色。
いい匂いがする。
伸びるチーズ、美味しい~
遅いランチを軽めにチーズトーストですまし、
次は桜のチーズケーキの「盛岡まるごと桜ちゃん」。
春の限定。
丁寧に淹れられた香り高い珈琲はたっぷり入っていて嬉しい。
桜の風味と塩味が丁度いい。
滑らかで口の中ですっ~と消えた。
食べながら釣り山の桜吹雪が蘇る。
今年も春が近い。
あの頃、春になると、
いそいそと物置から自転車を出し、
タイヤに空気を入れた。
あの丘を上り下りした日常のお陰で、
今でも運動できているのだろう。
そうだ、今年は久し振りに故郷の桜を見に行こう。