盛岡食いしん爺日記
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ある飲み会。
今回は予約してあるとのこと。
6時半の集合。
気のおけない4人の集まりだが、
始めは行き当たりばったりから、
近頃は予約する様になってきた。
盛岡の繁華街大通りの南側、
菜園のとあるビル。
店の名は「伯」。
初めてだ。
入口から少し背筋が伸びた。
でも楽しそうな暖簾を見て少し気が楽になった。
Royal Blue (1995 Remastered) · Henry Mancini & His Orchestra and Chorus
私は、お任せのコースが得手でない。
食べられない物は殆どないが、
自由に好きな物を好きなだけが性に合っている。
今宵は一応の覚悟。
入ると、店主とスタッフの出迎え。
明るく気さくな方だ。
いやいや、まだ神経を緩めるのは早い。
4人の筆頭格がよく来ているそうだ。
私を含め3人は初めて。
一人は仕事で知り合いだった。
話すうち店主の方はとてもフランクで、
その人柄にほっとした。
開店して13年だそうだが全く知らなかった。
献立の説明が始まったが、
前八寸だけ詳しい話で後は「ご覧のとおりです」と。
でもお願いしてひと通り説明してもらった。
いよいよ前八寸を前に乾杯。
「お~」
彩り豊かで器、飾りの小枝もいい。
料理のバリエーションもあり、
どれから食べようか迷う。
一品ごと変化のある味を楽しみながら旬を味わう。
白滝の木の芽田楽。
こんにゃくではなく白滝を使うとは、
ちょっとした驚き。
小気味よい食感を一口で。
美味しい!
活蛸の沖漬け。
ヤリイカ。
酒盗を使って和え、ひと手間かけている。
特製のハイボール。
水と氷が厳選されていて飲んでいる人は、
とてもまろやかだと言う。
早い人は、おかわりが始まった。
のし梅の綺麗なこと。
鈴製のお猪口。
伯の名物という「伯たまご」。
説明を聞いた時、
誰も玉子とは思っていなくて皆が一斉に「え~!」。
まろやかで卵の黄身は和菓子の様だ。
吸い物は蛤あんぺい
蛤をすり身にして蒸したもの。
閉じ込められていた蛤の風味が口の中でふんわり。
刺身には、
大好物のヒラメの縁側も。
刺身の箸休め的な昆布も美味しい。
温物は「桜むし」。
菜の花と桜の葉の下に鯛。
焼き物は新竹の子のチーズ焼き。
熱々だ。
ほどよい焼き具合でパルメザンチーズの香り。
新竹の子の春の食感。
鰤(ブリ)も入っていた。
私以外の3人のお銚子が並ぶ。
美味しい日本酒が揃っている。
美味しい料理に酒がすすむのは仕方がない。
浅漬けは毎朝仕込む。
どれも美味しかった。
これなら「お任せも」歓迎だ。
私の舌は庶民派で「グルメ」とはほど遠いが、
料理はビジュアルと香りに食の欲をそそられる。
どの料理もいい香りがした。
特に際立っていたのは吸い物。
椀を開けた瞬間、湯気にのる何とも心地良い香り。
たいていの料理人はそうなのだろうが、
伯の主人は、出汁に凝りに凝っているのだろう。
一つひとつ丁寧に手間をかけているのは勿論、
きっと食べる人の顔を思い描いて仕込んでいる。
料理は、調理する人の心もいただく。
そんな気がした。
コースが終わってそばを追加した。
普通に乾麺だと言われたが美味しい。
そばを美味しくしているのは、つゆだった。
「つゆはそのままにしてくださいね」と言う。
食べ終えると、
残ったつゆにそば湯ではなく、お湯を注ぐ。
これが実に美味しい。
そば湯とは、また違う味わい。
これは一つの「椀」の料理だと思った。
〆に丁度よかった。
後半には奥様も店にいてご夫婦と色々な話ができた。
4人とも幸せな顔で伯を後にした。
盛岡市菜園一丁目
おまかせ料理「伯」
※完全予約制