盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意してください。>
かつて岩手県で一番の繁華街だった肴町。
今は、アーケード街「ホットライン肴町」となっている。
昭和の時代、デパートもあったが移転し、
昨年の夏に商業施設「モナカ」がオープンした。
バスセンターも改築され、
昔の隆盛とまではいかないが、
そこそこ賑わいを見せている。
その向かいに旧町名「葺手町(ふくで、ふきでとも)」がある。
ゆっくり歩いても数分の距離で愛染横丁と呼ばれる路地もある。
老舗の蕎麦屋「東家」は、
わんこそばを食べに来る観光客で賑わう。
そのほかにイタリアン、カフェ、そば屋などもあり、
地元の人たちが行き交う。
お不動さんと呼ばれている神社もある。
この路や東側にある紺屋町も含め、
盛岡らしい場所だと思っている。
先日の午前中、近くにある病院に行った。
月に一度の検査。
久し振りに晴れたせいか、
待合の席は埋まり、病院のスタッフは慌ただしい。
空いていた席に座ったが、
車から本を持ってくるのを忘れた。
スマホを取り出したが、
すぐにしまい込んで居眠りして待つことにした。
診察も終わり、近くで薬を受け取ると、
午後1時半を過ぎていた。
通院も一苦労。
平日でサラリーマンのランチも終わった頃だ。
葺手町の真ん中辺りにある紅茶の店「しゅん」へ。
Answer Me (Live) · Keith Jarrett
ドアを開けると、
「お2階へどうぞ」
といつもの様に声をかけられ、
木の階段を上る。
途中で踊り場があり、
左右に分かれる。
左へ。
吹き抜けの「しゅん」の素敵な空間。
何色の世界と言えばいいのだろう。
いつだったか紅茶通が話していた。
褐色になった茶葉の色、
透明感際立つオレンジ。
特に印象的だったのが「紅茶の水色」。
色や味を伝えるのは私には難しい。
写真に助けられる。
窓際の大きなテーブルが空いていた。
呼吸がゆっくりして時の流れも穏やかに。
大きなテーブルで
よく打合せしたのは、もう7、8年前のことだ。
「盛岡食いしん爺のまちを歩けば」の取材でお世話になった。
葺手町の路を撮影している時、
しゅんのオーナーが通りかかった。
すかさず、
「後で取材に行っていいですか?」
「4時ごろだと、いいわよ」と急ぎ足で店の方へ。
背中に向かって「ありがとうございます!」
そのまま片手をあげてくれた。
気がつけば、あれから3年以上が過ぎている。
ほかにも色々な仕事をしてきたが、
各本は残り僅かになり、完売した本もある。
よく売れたものだ。
忘れてはならないのが、
盛岡や花巻の書店、東京のジュンク堂などで
本を手にとり買っていただいた一人ひとりの皆様。
それがあって次の仕事に取り掛かれる。
十数年前、ミュージャンの白井貴子さんと仕事でご一緒した。
歌が終わると、
彼女は、微笑みながらファンにサインと握手をしていた。
夫でありギタリストの方に
「なかなか大変ですね」と言うと、
一人ひとりがCDを買ってくれるから「白井貴子」があるんです。
なるほどと思ったものだ。
当時、新聞にコラムも書いていたが、
パソコンに立って向かうという。
長時間のステージに立ち続けるため、
日頃から足腰を鍛えていた。
「わがままカレー」の登場。
スパイスがきいたカレーで、地元の鶏肉を使う。
ミニサイズのソースを使わないココット風ドリア、
インド風飲むヨーグルトのラッシーもつく。
サラダは野菜を細かく刻んだもの。
カレーのスパイスの香りが食欲をそそる。
カレーにはサフランライス。
一つひとつ丁寧に作られていて美味しい。
夢中になってしまう。
冷めてくると甘味を感じるという紅茶。
なるほど、ほんのりと甘い。
通院の疲れも癒された。
帰ってひと仕事だ。
階段を下りた時、正面の壁のアートに目がとまった。
オーナーに聞くと、
「壁の作品は、前からありました?」
「2年ぐらい前にお客さんが制作してくれたの」
ということは、2年は来ていないことになる。
2年ぶりに食べたわがままカレーは、変わらぬ味だった。
一つひとつに想いを込め、一人ひとりに感謝を忘れない。
街は変わっても、変わらない味があるのは嬉しいものだ。