盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意してください。>
冬の盛岡。
毎日の様に小雪。
それほど積もらないが溶けにくい。
街中を流れる中津川。
擬宝珠のある上ノ橋の袂にある「敲太楼(KОТARО)山荘」へ。
季節に一度は訪れているが、
昨年は来なかった気がする。
どうも近頃、記憶が定かではない。
初めて朱と紫の階段を前にした時、
どんな店か想像できず、ゆっくり階段を上ったものだ。
Memories Of You · Benny Goodman
「お~千葉さん、お久しぶりです~」
「こんにちは」
「嬉しいなあ~」
相変わらず、爽やかな笑顔のマスター。
これほど眺めのいいカフェは滅多にない。
店の中をうろうろして窓の外を見る。
次は店の中を見渡す。
そして、窓際に座ると白湯が置かれる。
濡れティッシュに添えられた手書き。
ここから雪景色を見ているだけで得した気分。
「実は、畑を借りて農業してるんです」
「えっ!」
一緒の人と驚く。
近郊の農家の人からハウスの一部を借り、
葉物などを育てているという。
「冬でも収穫できるんです。」
牛のたい肥などで土を作り、
雑草なども気にせず無農薬で育てている。
有機栽培の本が並んでいた。
植物の力任せと、笑うが、
色々と研究しているに違いない。
「1年ぶりぐらいですよね」
この間に農業をしていたとは驚いた。
「よかったら、どうぞ僕が育てました。」
一緒の人は好奇心丸出しで質問攻め。
有機野菜が大好きな人だ。
食べてみると、一枚一枚が美味しい。
瑞々しいだけではなく、ほんのり甘味すら感じた。
朝早くからハウスに行っているそうだ。
一緒の人が、聞いた。
「疲れない?」
「う~ん、好きなことをしてると、疲れないです。」
店の中に彼の笑い声が響いた。
私たちは頷くばかり。
一緒の人は「ふんわりフレンチトースト」。
「美味しい!優しい味ってこういうのよね。」
景色を見ながら満足そうだ。
日によって違うブレンドの珈琲も丁寧に淹れてある。
いつの間にかドリンクのメニューも変わっていた。
野草のお茶があった。
「体調に合わせてどうぞ。」
ヤーコン茶を選んだ。
説明には、
・クロロゲン酸(ポリフェノール)により抗酸化作用。抗ウイルス作用、
・豊富なミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)
・筋肉の疲労回復や腸内筋力の強化
と書かれてあり、飛びついた。
そもそも野草茶、薬草茶に身体が馴染んでいる。
よく母が祖父母に飲ませ、自分も飲んでいた。
子供心に独特の苦味が身体によい気がしたものだ。
ヤーコン茶のお供は、
オリジナルのカッサータ。
イタリアのシチリア地方の伝統的なお菓子らしい。
散りばめられたドライフルーツやナッツの食感。
まだ固めのチーズケーキ。
見た目も綺麗で実に美味しい。
豊かな気分になっている自分。
気がつけば、
話し込んでいるうちに陽が傾いてきた。
夕暮れ時の盛岡の街と中津川。
予定よりかなり長居してしまった。
立ち上がると一緒の人が、
「これは、買えるの?」
「はい」
階段を下り、解散。
「来てよかった」
と彼の作ったカボチャを抱えて歩いて行った。
久し振りに来て楽しかった。
まだ、若い人が農業を始めた話に、
こっちまでうきうきしてきた。
ゆっくりし過ぎたが、
素敵なカフェで心身の錆が少し剥がれたひと時だった。