盛岡食いしん爺日記
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少し疲れたり、
ちょっとだけ嫌なことがあったり、
何となく俯き加減の日などに、
足が向く町中華。
盛岡の中ノ橋通にある古いビルの地下。
昭和の世界へと続く階段。
最近、床や照明が改修された。
明るく綺麗になった。
昭和の半ば、
盛岡で初めてビルの中に飲食店のテナントが並んだ場所。
昔は数軒の店があった。
混んでいると向かい側の店を覗いたものだ。
このビルは、昭和43年にできた。
初代の「えぞっこ」を昭和48年に今の大将が引き継いだ。
昭和の頃の肴町界隈は県内で一番の繁華街。
向かいには川徳デパートもあった。
今は新しくなったが、当時のバスセンターには、
近郊から続々と人が集まってきた。
その頃の話を大将から聞いたことがある。
「バスセンターの2階の喫茶店で見合いした人もいたらしいよ。」
昼から夜までお客さんは、味噌ラーメンを食べにきたそうだ。
And I Love You So · Perry Como
サラリーマン時代に通った店の一つ。
その日、えぞっこの真っ赤な暖簾を潜ったのは7時過ぎ。
ネクタイを締めたサラリーマン。
ケースから瓶ビールを取り出し、
自分で栓を抜き飲み始めた。
カウンターでカレーとあんかけ焼きそばを食べる人。
チャーハンと餃子を前に新聞を広げる人。
また一人入ってきた。
見知った顔だ。
「こんばんは、ご無沙汰です、今年もよろしく」
などと挨拶を交わす。
ちょっと嬉しくなる。
厨房から店の中に響く、大将の中華鍋の音。
続いて初めてらしい若い人がきた。
「ビール」と注文。
「ケースから出して」と言われ、
「あっ、はい」
「栓抜きは、ぶら下がってるから」
「はい」
昔は、あちこちにあった町中華。
今は、街にぽつんぽつんと。
次々に開店するのはラーメンの専門店。
昔のサラリーマンの愛したラーメンとチャーハン。
餃子と味噌ラーメンなどなどだった。
今日は、仕事帰りにスタッフときたが、
後はみんな一人。
さて、向かいに焼きそばがきた。
「いただきます!」と豪快に食べ始めた。
しっとりとした焼きそば。
これが美味しいのだ。
私は、レバーモヤシ定食。
まったく臭みのないレバー。
シャキシャキのもやし。
そこに沈んでいる汁をたっぷりつけて食べる。
ご飯がすすむ。
完食すると、
「今日は、おごるよ」ときた。
素直に礼を言った。
帰りがけ、カウンターで食べている知人に声をかけた。
「まだ仕事中?」
「いえ、今日は終わりました」
「お先します」
昔のやりとりを思い出した夜だった。
あの頃と違うのは、
ご飯を少なめにしてもらうことと、よく噛んで食べること。
「えぞっこ」
盛岡市中ノ橋通