盛岡食いしん爺日記
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盛岡のまち中を流れる中津川の東岸には
古い街並みが多く残っている。
中の橋の袂にある岩手銀行赤レンガ館(旧岩手銀行本店)から東へ
歩くと、アーケード街のホットライン肴町の入口。
そり向かいに旧町名葺出町(ふくでちょう)がある。
今ではふきでちょうとも呼ばれる。
屋根葺き職人の街だった。
長さ約140メートル。
その路は青海波の石畳風でオレンジに光る街灯もいい。
真ん中辺りに長福院、通称お不動さんがある。
老舗そば屋の東家、紅茶の専門店しゅんなども。
盛岡らしい路だと思う。
葺出町から紺屋町に抜ける小径があり、愛染横丁と呼ばれている。
数十メートルの短い路地。
Midnight Cowboy · John Barry
豆と喫茶のwaltz、少し奥まって蔵のイタリアンのfiloもある。
まだ現役の盛岡信用金庫本店の建物の裏の道にあたる。
そして、サラリーマン時代から通う北田屋もある。
ここの奥さんは私の高校の先輩だ。
いつも陽気に迎えてくれる。
ご夫婦との会話もご馳走だ。
ためらいもなく、長いつき合いの友人の家に入る様に引戸を開ける。
知り合いに会うことも多い。
温泉に入って心穏やかな日は、よく北田屋の暖簾を潜る。
その日は一緒の人が天丼を食べたいと言うので、
北田屋を目指して来た。
サラリーマン時代にランチを食べ、
同じ日、残業前にも食べに来たこともあった。
間違いなく一番多く訪れてきた店だ。
天丼が食べたいと言った人は、
メニューを見て悩んだ。
そばも食べたくなったらしい。
迷う人を見て微笑む奥さん。
「初志貫徹だ、天丼にします!」と力を込めて言った。
私は天ぷらそば定食。
中華そばや色々なそばが定食にできる。
これも北田屋ならでは。
ご飯、漬物に煮物も美味しい。
天ぷらそばは、一番好きなそばだ。
今まで生きてきてどれだけ食べたことか。
美味しい~
丁寧に作られ優しい味。
いつも「そうそう、この味」と心の中で呟く。
フリーランスになって気に入っているのは、
例えば本を制作する時、
好きな人、
リスペクトしている人、
気心が知れている人などと仕事ができることだ。
人間関係でストレスを感じなくてすむ。
歳を重ねていくうえで、
それが良いか悪いかは分からないが、
緊張感を持ちながらも楽しく仕事が進む。
ご飯にしても好みの味で居心地が良い店に通う。
食べ終わってひと言ふたことご夫婦と話し店を出る。
満たされた気分で家に向かう。
その夜、
「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」を読んだ。
万城目学さんの直木賞受賞作をにごたろさんが描いたコミックだ。
かのこちゃんと猫のマドレーヌ夫人を中心に日常が描かれている。
登場する人物、犬と猫たち。
不思議で温かい話が続く。
滅多にコミックは手にしないが、
後書きまで一気に読み終えて思った。
素敵な作品ができるには、
作者や携わるスタッフとのコミュニケーションが、
うまくいったことも大きいのだろう。
今夜は、ルハン君とぐっすり眠れそうだ。