盛岡食いしん爺日記
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ある人が、
この冬、まだ直利庵の「たちこ(白子)そば」を食べていないというので、
一緒に行くことにした。
その人が言う。
「あっちもこっちもマンションに囲まれてる」
「そうだね~」と言う。
「いつの間にか、ここ10年ぐらいですかね」
と辺りを見上げた。
でも、流石に100年を超す創業明治17年の老舗、
回りに負けずに威風堂々。
北東北では盛岡が一番マンションが多いかもしれない。
昨年、紺屋町の造り酒屋の跡地のマンションが話題になった。
そんな話をしながら、
休日の直利庵の暖簾を潜った。
The Theme from "A Summer Place" Percy Faith
中には待つ人たち。
しだいに外にも並び出した。
しばらくすると2階へ案内された。
中庭の池に岩魚がいると聞いたことがあるが、
まだ、店の人に尋ねたこともないし、見たこともない。
でもどこかに潜んでいる気がした。
思い起こせば、
2階に上がったのは20年ぶりぐらいだろう。
近頃はいつも1階だ。
広間で宴会をしたり、
わんこそばを食べたり、
親戚で集まってご飯を食べたりしたものだ。
一緒にいた人達のその時の顔が浮かぶ。
座敷はテーブル席になっていた。
今や料亭の広間も椅子になっている時代だ。
釜揚げしらす。
大根おろしにたっぷりの釜揚げしらす。
ちょっとだけ醤油をたらす。
小瓶がいい。
ふっくらとした片口いわし。
ほんのりとした塩味。
絶妙の茹で加減で、くさみもなく品の良い味。
美味しい。
たちこそばがテーブルに置かれて一緒の人は思わず歓声!
口の中に入れると、とろけるたちこを楽しみ始めた。
人は美味しい物を食べると、いい顔になる。
くさみもなく上質なたちこがネギの上にのる。
味を知る私も目で楽しむ。
さて、私は「杜仲茶ポークのかつ南蛮そば」。
前に来た時、壁の貼り紙を見て気になっていた。
つゆの中で、ころもが剥がれないのはかつ中華で知っている。
かつはさくっとしたままでネギが甘い。
勿論、蕎麦は言うことなし。
期待以上に美味しい。
「お互い、ご褒美ですね」
と笑いながらそば湯を飲む。
直利庵には、
幾度となく来ている。
K先生と間近で人違いされたことも。
相席の方から、箸をせいろに垂直に立てると、
切れ残った蕎麦も完全に食べられることを教えてもらった。
まだ、土曜が午前中仕事だった頃、
午後からの残業前、先輩に昼ご飯をご馳走になり、
気がついたらビールや日本酒を飲みだし、
仕事をやめて昼飲会になってしまったこともある。
最近ではブロ友の娘さんが、
信州から盛岡の大学に入り、直利庵でアルバイトしていた。
今は郷里で社会人だが、
賄いが楽しみだったらしい。
次々と思い出が蘇る。
さて、椅子に根が生えてしまいそうなので重い腰を上げた。
明治17年創業
「直利庵」