盛岡食いしん爺日記
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日曜日、朝の冷気。
北国は一気に10月らしくなってきた。
道端に咲く朝顔。
陽射しを浴びながらもどこか元気のない花弁。
季節の違いに戸惑っている風。
ついこの間まで蒸し暑い夏日。
とんでもない豪雨の恐ろしさも冷めやらない。
けれど、季節は移ろう。
並木の緑は彩度を落とし、
ビルの谷間から見える空は秋。
Everything Happens to Me · Duke Jordan
まる一日空いたので昼前に盛岡の街を出た。
雫石を経て西和賀に向かった。
上りが続き、山の麓に色づいた木々を見た。
山伏峠を一気にトンネルで抜ける。
標高は400メートルを超える。
トンネルを過ぎ数分で「利休庵」がある。
時間は12時半。
盛岡の大通りに店を構えている。
春来た時に頂いた名刺。
「あ・利(あり)」と「和味彩々 田(でん)」と書いてあった。
いつか行ってみたいと思うが、
アルコールを控えてからは夜の街に縁遠い。
利休庵は、二つの店を持つオーナーが、
西和賀に蕎麦屋を始めた。
土日だけで冬季は休業。
今や大人気で、のびのび広い駐車場にまで列ができる。
一緒の人と待つ。
並ぶのは苦手だが、
秋田からバイクで来た人と話したり、
家族連れの子供が近くの小川に蛇がいると騒いだり、
みんな秋が忍び寄る山里の空気に和んでいる。
しばらくしてカウンターに案内された。
席につくと、店の人が、
「あ~すいません、松茸は完売です。いい写真撮れないですね」
「いえいえ、蕎麦が一番の目的ですから。」
待っていると、ふわっ~と出汁の香り。
隣に座る人が「いい匂いだぁ~」と、上を指差した。
上をピンで留めた張り紙がふんわり。
隙間からいい匂いが零れてきている。
始めにプリプリの食感の「玉こんにゃく」。
芯まで出汁のきいた汁が染みている。
隣の人は干し桜海老と南瓜のかき揚げが単品でメニューにあり、
それを蕎麦にのせてもらった。
大通りの「田」は、知る人ぞ知る和食の名店。
メニューの裏にも書いてあるが、
鰹節、宗田節、あご節、鯖節を調合し熟成させ、
醤油のかどをとっており旨味が濃い。
蕎麦つゆの味は確かだ。
海老がいっぱいだと、幸せそうに食べている。
私は、まず舞茸天。
箸を入れると舞茸の香り。
きのこの季節、秋だ。
そして、もり蕎麦。
利休庵の蕎麦をじっくり味わう。
松茸を狙うには、開店早々に来なくては無理だろう。
出かける時点で諦めていた。
見るからに品のよい風味豊かな蕎麦。
するりと喉を通る。
近頃、もり蕎麦を重ねる人をよく見かける。
分かる気がする。
蕎麦を1枚にして今年初めての栗ご飯。
秋をいただく。
美味しい。
山里にポツリとある蕎麦屋「利休庵」。
どうしてここで始めたのか?
利休庵と名付けたのは?
色々と聞きたいことだらけ。
いつか夕飯に大通りの店を訪れ、聞いてみたい。
和賀郡西和賀町沢内貝沢
「利休庵」