盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意>
「千葉さん、今、時間ある?」
まだ寝起きだった。
歯磨き、顔を洗う、髭を剃って着替える。
床にお腹を出し、悠々こっちを見てる猫君。
君は、9年間そのまま。
それでも、撫でたり、顔を近づけてもなんかいい匂い。
不思議だ。
昔々、縄文時代の人たちは体や髪を洗ったのだろうか?
考えごとをしながら準備完了。
Enya – Amarantine
20分後には着いた。
私に声がかかる時は、ほぼ食べ物に関係する事が多い。
「今日は、何だろう?」
車を停めていると、ドアが開き出迎えてくれた。
中にはお客さんも。
テーブルは賑やかだった。
ピオーネが大きな籠に溢れていた。
なんと庭の野生化した葡萄の木に実ったそうだ。
来ていた方は料理が得意で、早速持ち帰りジャムを作ってきた。
手製のワッフルにつけたり、紅茶に入れたり。
どれも美味しくて寝ぼけ頭が晴れた。
とても籠には入りきれず、この数倍の量だったという。
ピオーネは、宝石の原石の様に見えた。
野生の逞しさも感じた。
木を見に庭に出た。
高さは平屋の屋根に届かない木が一本。
それに鈴なりだったそうだ。
まだ、あちこちに残っていた。
漲る葡萄の木の力を感じた。
お昼も近いので帰ることにした。
すると、大きな袋一杯にピオーネ。
お礼をいい、後ろの座席にそっと置いた。
家に帰って少し冷やしてから、ひと粒口にした。
冷たく暑さを忘れた。
甘さと酸味のバランスがいい、爽やかな喉越し。
丈夫な皮は自分の種を守っているふうだった。
甘さの強い葡萄もいいが、本来の味を体験した。
ひと房ずつ手にとり、何人かに分けた。
口々に、見た感じとは違い美味しい葡萄だと答えが返ってきた。
改めてひと房を手にとった。
これが、本来の果実の美味しさなんだと思った。