盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意してください。>
盛岡の西の雫石町。
奥羽山脈の山々、岩手山麓に広がる盆地。
盛岡から車で20分も走れば町に入る。
あちこちに温泉があり名湯も多い。
小岩井農場は知られているが、
美味しい蕎麦屋も多い。
魅力的なカフェやレストランもある。
あまりメジャーにならないのはなぜだろう。
勝手な想いだが、
小岩井農場は別にしてゆったりとした町のままでいて欲しい。
雫石の街を通り過ぎ西へ。
JR田沢湖線春木場駅や御明神郵便局のある方へ。
農村風景の中の静かな通り。
André Gagnon - Nocturne
<音楽が流れます、音量に注意>
その通りに「オーロラコーヒーロースターズ」がある。
もう十数年前だろうか。
国道46号線から、この街道に入った。
特に考えもなく遠回りしてみようと思ったのだ。
その時、通り過ぎたものの何だろうと心に引っかかった。
しばらくの間、日常に流されていたが2か月ほど経ってから田沢湖に行った。
その帰り、思い出し車を停めた。
家の敷地に小さなコンテナハウスを置いて何かの店にしている様だ。
地元の人がくつろぐ飲み屋かな、カフェかな。
近づくとAURORA COFFEEROASTERSと書いてあった。
中に入ると、思いもよらない世界が広がっていた。
焙煎機が置かれ、珈琲の香りに包まれた。
豆のほか、小さなカフェも。
あれから長い年月が過ぎた。
オーナーは、サラリーマンを辞めて珈琲に専念。
焙煎機も新しくなり、中もだいぶ変わった。
今では、オーロラコーヒーロースターズの豆を扱うカフェもある。
夏には庭に緑の中にテントが置かれ、テラス席になる。
世界の名だたる珈琲豆が並ぶ。
ここで初めてゲイシャを味わった。
一つひとつの包装のデザインもオーナーがしている。
ゲイシャは、もともとはエチオピアに自生していたそうで、
その地名からゲイシャと呼ばれる様になった。
珈琲豆は品種改良を繰り返されているが、ゲイシャは原種に近い珈琲豆。
1931年に発見され、1950年代に南米・コスタリカへと渡った。
1960年代にパナマへと伝わったが、収穫量が少ないなど、
コーヒー農園には定着しなかった。
パナマの標高1600メートルの高地にエスメラルダ農園がある。
この農園は、無農薬栽培などで定評があった。
聞くところでは、谷の奥の方に忘れ去られたゲイシャが残っていたそうだ。
農園の人たちの努力で栽培され、2004年の国際品評会で優勝した。
これまでにない最高の高値がつき、ゲイシャショックと呼ばれた。
こうして一気に世界にその名が知られた。
奥にベンチが一つと小さな丸いテーブル。
ゲイシャの爽やかな酸味は、心地良い。
風味、香味が素晴らしい。
私は、初めて飲んだ時、とても上質の紅茶の様に感じた。
ひと口ごと、喉にほのかに残る酸味と甘味。
後味はすっきり。
数年前、珈琲の酸味が好きじゃないと言う人がいた。
一度、ここに連れてきた。
試しに飲んでもらったら、
「これは酸味じゃなくむしろ甘味を感じる。」
と言って、その人は2種の珈琲を飲んだ。
珈琲とは奥が深いものだ。
その日、お菓子もあった。
ちひろ菓子工房さんのカヌレは完売。
初めて知ったお菓子を食べた。
Мue.(ミュー)というところで作っている。
猫のお菓子。
まわりから食べる。
猫ちゃんが残った。
その後、パクリ。
ほのかな甘さを残して消えた。
オーナーの新里さんは猫を飼っている。
母屋にくうちゃん。
今日も会えた。
空色の目なので空(くう)ちゃん。
寛いでいる。
視線の先は店の窓の方。
動く彼の姿を見ている様だ。
先代の猫ちゃんもどこからかやってきたそうだ。
亡くなってしばらくしてくうちゃんが現れた。
庭のテラス席の緑に石の猫。
先代が亡くなってから置いたそうだ。
しっかり店を見守っている。
心優しいオーナーが焙煎し淹れるゲイシャは今日も格別の味だった。