盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意>
厳しい残暑。
この夏、何度「暑い」と嘆いただろう。
誰かと顔を合わせても挨拶は同じ。
事務所で窓の外を見ていた。
硝子一枚隔てれば、異様に温まった空気。
強い陽射しに景色が白茶けて見える。
仕事もあれやこれやで進まない。
脳細胞も沸騰している。
どこかで一息入れたい。
でも、歩くとすぐに汗ばむ。
車のキーを持った。
岩手県庁の道路向かいにある駐車場に停めた。
盛岡の人が「桜山」と呼ぶ一角を歩いた。
岩手県庁などの官庁街と盛岡城址を背にした桜山神社。
この間に100軒ほどの店が鮨詰め。
老舗から新しい店まで、ある意味盛岡がぎゅっと詰まっている。
Bill Evans - Waltz for Debby
お詣りする人は後を絶たない。
季節ごと門に飾られる人形。
今は秋祭の山車に似せている。
足元には石の亀。
ひと休みは「パアク」にしよう。
途中で見つけたポスター。
いいね~
サラリーマン時代に通った喫茶店。
あの頃は昼休み時には混んでいた。
昼ご飯の後、2階の席で仲間と珈琲を飲む。
近くのリーベに行ったり、ここに来たり。
今は閉めているが昔は入るとすぐ2階に上がった。
昔はタバコを吸う人が多かった。
ある日、一人で入った。
珈琲と一緒にアルバイトの女性がマッチを持って来てくれた。
ライターとマッチが共存する時代のことだ。
火をつけようとタバコをくわえ、
白い小さな引出しを片方から押す。
小さな箱の背中に何やら文字。
電話番号と時間のある時お願いします。
と書かれていた。
懐かしい思い出。
あの時代は浪漫があったなあ~
「えっ、電話したのか、ですか?」
それは秘密です。
マッチに住所は「盛岡市桜山神社通り」と書いてある。
思わずほっこり。
強い陽射しを幾年受けてきたのだろう。
席について見回すと、昭和の世界。
おそらくテーブルの配置も変わっていないだろう。
椅子はやわらかく身体を包む。
ふんぞり返るようにして仕事の話をしながら飲んだ珈琲。
紅茶とパウンドケーキにした。
仕草もゆっくりになっている。
パウンドケーキは、懐かしい味がした。
大ぶりのクルミがたっぷり。
美味しい。
紅茶にしたのには訳がある。
少し間をおいて珈琲ゼリーを食べようと思っていた。
パアクと言えば、冬のホットケーキと共に名物。
褐色の上に雪のようなアイスクリーム。
さっぱりとした甘さの下に、ちょっとしたほろ苦さ。
たまらなく美味しい~
食べ終わるとお茶が出てくる。
そこで、またゆっくり。
店の人に、「そこの緑が昔の椅子ですよね。」と言うと、
「そうなんですよ、でも開店当初は黒だったんです。」
緑の印象が強く黒い椅子の覚えがない。
城跡近くにあり、
「公園のように皆の憩いの場になればいい。」
と願ってつけた名づけられたパアク。
昔は若いサラリーマンで賑やかだった。
一緒にきた人達の顔が浮かぶ。
あの頃のままの笑顔。
みんなどうしているだろう。
また来ますと店を出た。
ここが落ち着くのは私が昭和の人だからかな?
なんて思いながら仕事に向かった。
パァク
〒020-0023 岩手県盛岡市内丸4−6