盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意>
肴町で仕事してランチの時間。
アーケード街からすぐの「茶廊 車門」。
入って行った人に続く。
Golden Land · PYRAMID · 和泉宏隆 · 鳥山雄司
入ると左手に古い写真がある。
明治時代に建てられ、蔵として使われていた頃の写真。
隣のモダンな建物は洋装店だったらしい。
今では貴重な一枚だ。
当時の肴町の繁栄ぶりが伺える。
「いらっしゃいませ、お2階へどうぞ」
促されて階段を上がる。
先日来た時は、2階がいっぱいで下だった。
思えば久しぶりの2階。
漆黒の梁がライトに浮かぶ。
東日本大震災の時、
棚の皿も落ちなかったと聞いた。
昭和20年代の後半に蔵を改装した喫茶店として創業したらしい。
なんと70年を越える。
この空気感は、車門だけのもの。
空いていた席が次々にうまる。
サラリーマン時代、年に30回以上、
霞が関に行ったことがあった。
早朝、新幹線に乗り、
10時時過ぎから午後1時近くまで会議。
帰る前に同僚と日比谷公園の松本楼でランチ。
1時を過ぎているので、テラス席に座れた。
たいていオムレツのハヤシソース。
ある日、雀が隣のテーブルのパンの欠片を摘まんで飛んだ。
その早業と逞しさ。
「東京のすずめは凄いね」と2人で笑った。
彼の家は大きな農家で林檎の栽培は主に彼がしていた。
数年してお互いが異動。
別のセクションに行っても時々会っていた。
10年近く経って彼は、病に侵された。
それでも毎年、数種類の林檎が届いた。
ある年、息切れしつつ大きな箱を車から降ろした。
「どう?」と聞くと。
「酒も飲めないけど、まあ、ぼちぼち」。
小さくなった背中を見送った。
あの年以降、林檎は届いていない。
訃報は林檎の花が咲く頃だった。
いつか松本楼の話でもしながら、
車門のハヤシビーフライスを一緒に食べたかった。
さて、ほぼ3年ぶりの車門の「ハヤシビーフライス」。
あちこちの注文もこれが多い。
テーブルに置かれると、
湯気にのってじっくり煮込まれたビーフの香り。
食欲を刺激してくる。
ご飯を玉子が綺麗に覆う。
視覚も臭覚も惹きつけられてしまう。
ご飯と配分を気にしなくてもいい、たっぷりのルー。
「いただきます~」
飲むように食べてしまう~
スプーンを置いて何度も噛む。
ハヤシビーフを玉子が一層まろやかにしている。
喉に残るほのかな甘味を楽しんだ。
美味しかった。
そろそろ打合せの時間。
階段を下りて会計。
マスターに言ってみた。
「忙しそうですね?」
「でも、頑張ります」とこっちを見た。
ちょっとした会話で元気をもらう。
車門には珈琲を飲みながらの打合せが多い。
ランちはハヤシビーフライスで、
もう一つのお気に入りが「黒ゴマ汁粉」(冬季限定)。
これが美味しい!
しかし、ここには色々な思い出もあるなあ~
今度は「思い出のカフェ」特集でもしようかな?
あれれ、2時をだいぶ過ぎている。
急いで打合せに行こう!
茶廊 車門