盛岡食いしん爺日記
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滝沢市方面の用事が済んで盛岡に帰る途中だった。
暗くなりかけていた。
ある店の名が浮かび、無性に訪れたくなった。
車から1970年代の洋楽が流れていたせいもある。
近頃、時間にゆとりがあるのも一因だろう。
その店は「茶囲家(さいけ)」。
10年ほど前、打ち合わせで1年ほど毎週の様に通った。
その後、数年ぶりに訪れた。
近くの印刷会社で打合せがあり、その前にランチしに寄った。
それから、もう数年は経っている。
駐車場に停めると胸が少しざわつく。
一緒の人に言った。
「ここでご飯にしましょう」
America - You Can Do Magic
「なんだか、不思議そうな店ですね」と中を覗き込む。
私はよく知っている。
ドアを開けると、外からは全く想像できない雰囲気なのだ。
ひと足ごと心が弾む。
何もかも変わっていない。
一緒の人はキョロキョロ。
「この感じ、外観からは分からないなぁ~」
マスターが出てきた。
「こんにちは」と言うと、
「おや、いつもネクタイだったから一瞬、わからなかった」
覚えていてくれた。
よく来ていた頃のテーブルに座った。
「いつもこの辺でしたよね」と静かに微笑む。
マスターの雰囲気も変わらない。
メニューの表紙も洒落ている。
迷わず「ホロホロ鳥の塩焼きセット」を頼んだ。
一緒の人は、
「お~!ホロホロ鳥ですか!」と照り焼き。
マスターに言った。
「中をうろうろしていいですか」
「どうぞ、いくらでも」と厨房へ。
ちょっと心拍数が上がる。
あれもこれも懐かしい。
茶囲家では今や花巻のブランドのあの「ホロホロ鳥」が食べられる。
石黒農場で大切に育まれ、有名なレストランで引っ張りだこ。
ここでは、お手頃価格で食べられる。
しばらくして塩焼きセットがテーブルにのる。
数年ぶりに訪れた茶囲家で、久し振りのホロホロ鳥。
一緒の人は照り焼き。
口にした瞬間、「美味しい!」
ホロホロ鳥は初めてで目をまん丸にして美味しいと感激している。
確かに中の雰囲気やホロホロ鳥が食べられる事など思いもよらない。
私は塩焼き。
きめの細かくしっかりした肉質。
全く臭味などなく、噛めば濃厚な旨味で優雅な味わい。
この香ばしい皮が、また美味しい。
一緒の人は人気のキャフェラテ。
私は、エスプレッソシングル。
よく来ていた頃はダブルを飲んでいた。
運んできたマスターに言った。
「ホロホロ鳥、美味しかった~」
「そう言えば、たいていホロホロか鯖でしたよね」
そうそう、そうだった。
エスプレッソを飲みながら、
ここで閉店まで打合せしていた頃を思い出した。
「また来ます」とマスターに告げた。
帰り道、助手席の人が言う。
「サイケデリックからのサイケなんですか?」
私もそう思っていたが、
看板に「和カフェ 茶囲家」の後に「Psyche」と書いてある。
前に調べたがPsycheとは、ギリシャ語で蝶や魂らしい。
だが、よく分からない。
今度来たらマスターに聞く楽しみができた。
アジアンティストの中に古い洋楽と昭和が不思議に調和する空間「さいけ」。
まるで小説の中にいるような夜だった。
また、近いうちに必ず行くつもり。
盛岡市みたけ3丁目
和カフェ 茶囲家 Psyche