山下達郎「RECIPE (レシピ )」 Edit Version
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もう9月。
時の流れの早さを想う。
ひと晩徹夜しても何とかなった頃、
地方都市の大きなプロジェクトに関わっていた。
平成の始めから十数年にわたる計画。
5年後、離れる時に仲間と呑みながら、
未来の街を語り合った。
あれから瞬く間に年月が過ぎ、
二十年、三十年後を想えば、
そこに自分の姿は無いかもしれない。
青春時代は未来を何となく感じていたが、
生きていくほどに将来が先細り。
せいぜい一日を大切に暮らそう。
どこかに出かけたいとか、
何かを食べてみたいと思いついたら、
出来る限り楽しみたい。
同世代の人と西和賀へやって来た。
山伏トンネルを抜けて数分。
「利久庵」へ到着。
豪雪地帯の西和賀ならではの雪室そば。
風味を保ったまま夏を越す。
このそばのイベントは終わったが、
まだ食べられるらしい。
そば畑には白く小さな花。
10月にもなれば新蕎麦の季節。
その前に、
暗く冷たい中で、
じっとしていた蕎麦を味わいたかった。
利久庵は春から秋にかけて土日と祝日だけの営業。
盛岡の和食の名店「和味彩々・田」が開くそば屋。
リーズナブルな価格が嬉しい。
親方は、真剣な眼差しで料理を作っている。
でも楽しそうだ。
一緒の人が言う。
「来るたび、メニューが増えて迷うなあ~」。
向かいは「揚げなすと小エビ天の梅おろしそば」。
それにニシン煮と豚バラ丼。
テーブルに運ばれてくると「お~」と声になる。
「食欲の秋だぁ~」と力強く箸を持つ。
こっちは唾を飲み込んだ。
丁度いい柔らかさで昆布がきいているのだ。
ニシン煮のテイクアウトも始まっていた。
豚バラ丼は「美味しい~」と何度も繰り返している。
こちらは初の「カレー南蛮そば」。
店のスタッフに聞いた。
「この黒いソースの様なものはなんです?」
「胡麻のソースです、よくあいますよ」
2人で顔を見合わせ「へぇ~」。
スープをスプーンですくう。
鼻先にカレーとゴマの香りが入り混じる。
ひと口飲むと深いコク。
絶妙のとろみ感に「う~ん」と頷いてしまう。
向かいは興味津々。
このスープがそばに絡んで美味しい~
野菜の薄衣の天ぷらも美味しい。
親方や店の人に「美味しかったです!」と言って外に出た。
「思いついたら出かけよう!」と言うと、
「おう、つかの間の幸せ求めて、だね~」
盛岡に戻ってそれぞれ仕事に。
彼と別れて路地裏で見かけた猫。
ついこの間まで「にゃあ~にゃあ~」と鳴いていた子猫だ。
あっという間に足取りもしっかり。
人が生きる間、猫たちは何代も変わる。
彼らの1年はもっと早い。
「頑張れよ」なんて背中に言った帰り道。
利久庵
〒029-5703 岩手県和賀郡西和賀町沢内貝沢3地割648−127