宮田 大 Dai Miyata/ポンセ Ponce-Estrellita :エストレリータ
<音楽が流れます、音量に注意>
盛岡の中津川の東側に広がる古い街並み。
造り酒屋、染物屋などが建ち並ぶ。
角打ちの酒屋さんもあり、賑わっている。
その紺屋町界隈にある自家焙煎コーヒー屋「クラムボン」
九州から来た人が、
雪道を歩くと転んでばかりで、地元の人の足元を見ていたそうだ。
すると、みんな小股ですり足。
それから真似をしたら転ばなくなったそうだ。
年末と年始にかけて珈琲を買いに行く店が2軒ある。
そのうちの1軒が、ここ。
着いたのは午後の3時過ぎ。
カフェでひと休み。
豆を受け取りに来る人が絶えない。
スタッフは忙しそう。
ブレンドとオレンジの焼き菓子でひと息。
「負けない心釜石」と書いてある。
あの釜石の「洋菓子専科かめやま」のお菓子。
綺麗な焼き色、香るオレンジ。
オレンジのツブヅブがたくさん。
美味しい。
クラムボンの珈琲とよく合う。
カップとソーサーに、ひと粒の珈琲豆。
珈琲の焙煎は、浅煎りから深煎りまで段階がある。
詳しくは分からないが奥が深そうだ。
クラムボンのマンデリンのフルシティローストが好きだ。
酸味は微かに残るぐらいで香りが強い。
香り、苦味、酸味と甘みのバランスがよく、珈琲らしくて好きな味だ。
マンデリンを挽いてもらった。
袋から、溢れてくる香り。
3年半ほど前、取材をさせてもらった。
いつものアポなしの飛込み。
オーナーの娘さんが快諾してくれた。
暮れかけてから写真家の松本伸さんを連れて来た。
クラムボンのオレンジの灯りと焙煎の香り。
朝早くからの疲れも忘れ、
彼は、カメラを構えると夢中でシャッターを切った。
<撮影 松本 伸>
<撮影 松本 伸>
<撮影 松本 伸>
「焙煎の仕事が一番好きです」と言いながら、
焙煎機の珈琲豆から目を離さない。
娘さんの眼差しを捉えるカメラ。
そして、オーナーの高橋さんの体調が良くないことを知った。
<撮影 松本 伸>
その後、彼は本を発行したが、結局、会えないまま逝ってしまった。
美味しい珈琲を飲みながら蘇る思い出。
宮沢賢治の童話「やまなし」の一節。
二匹の蟹の子供らが青白い水の底で話している。
「クラムボンはわらったよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
「クラムボンは跳ねてわらったよ。」
カニの子たちが見上げた水面に映る、
流れが生みだしては消える「泡たち」のことだと私は思っている。
だが、諸説あるらしい。
「クラムボン」を店の名前にした高橋さん。
きっと熱心な賢治ファンだったに違いない。
さて、雪道をちょこちょこ小股で歩いて帰ろう。
盛岡市紺屋町5‐33
Tel 019-651-7207
自家焙煎コーヒー屋「クラムボン」