リスト:愛の夢第3番 / 反田恭平
<音楽が流れます、音量に注意>
一羽の白鳥が空から舞い降りた。
そま姿を追うと稲の刈り取られた田園に、百に近い白鳥。
ようすを見に行った「雫石川園地」。
揃って優雅に食事中。
まだ、グレイがかった3羽が並んでいた。
近くで見ていた小さな子が言った。
「あの、まだ白くなっていないのは子どもだよ」
耳を立てた。
父親らしき人が答えた。
「まあ、青年かな?」
「だってほら、隣のお父さんとお母さんの真似をしてるよ!」
父親は笑って頷く。
親子が帰って行った。
確かに青年と言ってもいいが、
小さな子の意見に従うことにした。(笑)
今年も無事にようこそ。
そう言えばも岩手山はだいぶ白くなった。
だんだん、麓にやって来る。
気がつけば、もう、11月半ばになり、北国は初冬の風景。
帰って来た白鳥を見ていた父と子に心が和んだ。
20分ほど走って盛岡の街に戻った。
約束があった。
待合わせは通称桜山のティーハウス「リーベ」
ここは落ち着いて話す事ができる。
早めに着いてケーキセット。
ミルフィーユにした。
アイスクリームも添えられ、
下にコーヒーゼリーまで。
美味しい。
彼が来る前に食べ終わろう。(笑)
リーベのティーポットは、下の部分がカップになっている。
初めての時はカップを探したものだ。
なんとなくティーポットを見ていたら、白鳥を思い出した。
この冬、まだグレイの鳥たちも立派に成長するのだろう。
約束の時間より早く来て、そんな事を思い、待つのもいい。
2杯目の紅茶を注いでいると彼が来た。
彼は、「紅茶の店で、珈琲を飲みます。」と笑う。
互いの近況やら、ちょっとした相談事やら。
あっという間に時は過ぎる。
1時間半ほどして解散。
桜山の夜を通って帰った。
彼は仕事帰りで、ネクタイを締めていた。
歩きながら首の辺りを触ってみた。
マフラーの下のリラックスしたシャツとセーター。
シャツがきちっと首を巻く、
あの、忘れかけていた感触を思い出した。
静かになって2年が過ぎ、ようやく人通りが出て来た盛岡の街。
ゆっくり歩きながら思った。
今の仕事柄、打合せに行ってもジャケット姿。
ここ2年、大きなパーティもないし、公の行事もない。
ぼちぼち小さな会合も始まりそうだ。
気づかないうちに集まりに出かける事が億劫にもなっている。
少し普段着の延長から抜け出し、
ネクタイでも締めて出かけてみよう。