Ayatake Ezaki - 薄光 / Hakukou
<音楽が流れます、音量に注意>
空の青が、薄くなってきた。
長袖が肌に心地よい。
元気のない積乱雲と空高く巻雲。
今の時期にだけ、一緒に空に浮ぶと聞いた。
北国の秋のプロローグ。
ドライブ日和。
黄金色に染まり出した稲と水色の空。
好き勝手に変わる雲。
飛行機雲が水色に線をひく。
なんだかとても平和な世界。
ふわりと浮かぶ雲が白いクリームパンに見えてきた。
そろそろランチの時間。
花巻市石鳥谷。
田園に囲まれた住宅街のはずれにパン屋「ルーツ」がある。
「小さなパン屋で、狭くてすいません」といつも言うオーナー。
工夫と手間をかけられて並ぶパンは、
口に入れると味わいが広がる。
午後になれば「売り切れ」が目立つ。
オーナーの弟と柴犬が営む「たそがれ農園」の珍しくて元気な野菜。
その日は、花巻のお菓子屋さんの「シャノアール」の焼き菓子も。
丸い食パンが、まだあった。
<目に止まった季節限定のパン>
「県内産の減農薬栽培の梅で「梅酵母」を起こして焼きました。
2種のオーガニックの干しあんずをたくさん入れ、
杏の甘酸っぱい香りが贅沢なほど香るパンです。
トーストすると更に杏が香り、クリームチーズなど、乳製品と大の仲良し。
梅酵母の酸味と杏の甘酸っぱさが口いっぱいに広がり、『夏の欠片』に
触れたような気分になりますよ。」
と書かれていた。
手にとった。
<夏の欠片と言う名のパン>
たそがれ農園の野菜たち。
ナスは、ヨーロッパ系のものと日本古来の品種があった。
買い込んだパンを少し齧って食べ、花巻へ。
順調に予定をこなし盛岡に戻った。
気になっていたフランス系の「ローザ・ビアンカ」
「じっくり火を入れる事で柔らかくトローリとなります。」
と聞いてきた。
「ローザ・ビアンカ」のステーキ。
焼くだけで、とても美味しかった。
<ルーツの食パン>
何度目かで、ようやく買えた食パン。
粉と自家製酵母と塩と水だけ。
それでも心地良いもちもち感に嬉しくなる。
「ライ麦畑の胡桃カレンズ」には、ふんだんに果実が詰まっていた。
ライ麦の味わいと大粒の胡桃の食感。
そして、カレンズ(干した山ぶどう)の甘味。
ナスと食パンにスープで、贅沢なご飯になった。
つい先日、会った同級生が話していた。
「俺は近頃、一食一食を大切にしている。」
明日の朝は、丸い食パンと夏の欠片にしよう。
抱えてきたパンは、あっという間に無くなりそうだ。