Rod Stewart - I Can't Get Started
<音楽が流れます、音量に注意>
とても気になっていた「正心庵」
秋田県、湯沢市の佐藤養助総本店の道路を挟んで向かい。
揚げたての天婦羅と茹でたてのうどんと聞いていた。
再び、三関のサクランボを買いに行く途中。
前より、早く盛岡を出てきた。
門から庭を通って玄関へ。
一歩ごと、はやる心。
カウンターの席。
襖には蕗。
店の雰囲気に膨らむ期待。
「季節のおまかせ天ぷら」
野菜の先付。
新緑を思わせるほうれん草、オクラの上にイクラ。
綺麗で瑞々しい。
「肌寒くはないですか?」
先客と入れ替わり、換気の後、エアコンを強くしていたらしい。
「苦手な物などありましたら、遠慮なく、おっしゃってください」
話す目を見て思う、この人の料理なら何でも食べられそう。
揚げたての緑鮮やかなオクラ。
とてもさっぱりとしている。
レンコンは茨城産。
「美味い!」
サクサク、ホクホク。
「レンコンは、硬い所から柔らかい所まである素材ですよね」
と言うと、
「やはり、その部分ごとの使い分けですね」
海老が揚がる。
旨味をしっかり包んだ衣も美味しい。
尻尾まで一つの料理。
美味しさを伝えきれない。
自分の写真と筆力に限界を感じた。
椎茸は、口の中で一気に旨味がほとばしる。
素材が嬉しがっているよう。
カボチャは、いい食感を残しつつ、甘くやわらかい。
人となりが気になってきた。
東京で修業し、子供が保育園に上る頃からは秋田で育てると決め、
秋田に帰って包丁を振るった。
そして、この店を頼まれた。
佐藤養助商店の八代目が見込むのも頷ける。
一方、スポーツも。
競技スキーの選手で、小学生を指導しているらしい。
次は鯛。
大葉の香りが鼻腔を抜け、続いて鯛の美味しさ。
鯛の産地、男鹿の塩で。
茄子は九州産。
「こんなにジューシーな野菜だったとは」
天婦羅と言うより、水分と野菜の旨味をうす衣に閉じ込めた料理だ。
稲庭うどんが茹でられ、登場。
また、一段と艶々と輝いて。
あっという間に完食。
鱚の天ぷら。
ほのかに甘くやわらかい食感。
尻尾まで味わう。
改めて思う。
ころもは素材を活かすためにある。
人の衣と同じなんだ。
しめくくりは、さつまいも。
鎌倉時代から続く、品の良い輝きの川連(かわつら)漆器にのせた。
さつま芋の厚い、ひと切れ。
落ち着いた漆器の上で、「どうだ」と言わんばかり。
やはり、これだけでも一つの料理。
ゆっくり時間をかけて揚げ、焼き芋よりも甘くほくほく。
蜜が輝いていた。
食べ終えたが、天つゆと塩が殆ど減っていなかった。
また行きたい。
そして、誰かをもてなす大切な場にしたい、などと思った帰り道。