Rubén González – Siboney
<音楽が流れます、音量に注意>
小学校の4、5年生の頃、
忍者に憧れていた。
子どもの頃に暮らした街は、
岩手南部で宮城県との境の一関。
公園の丘の中腹に家があった。
左右に折れながら階段が数十段続く。
おそらく、ビルの4,5階分はあっただろう。
ゴウゴウと風が鳴る日は、
こっそり外へ出て、階段を飛んで下りた。
小枝や新聞広告の紙が空に舞う。
大きな柿の木の下が踊り場のようになっていて、
右手の人差し指と中指を立てる。
何か唱えて、階段を飛ぶ。
風に乗り、いつもより宙に浮く気がした。
その頃、よく同じ夢をみた。
勢いよく丘を下り、土を蹴る。
さほど高くない崖から、ゆらゆらと舞う。
家並の屋根を下に見て空を遊泳。
しだいに浮力が無くなり屋根が近づくと両手で漕いだ。
いつもそのあたりで目が覚めた。
そんな思い出を一緒の人に話していた。
すると玄関のチャイム。
出前の鮨が届いて、ランチ。
名物の納豆巻には、ワサビ入りでこれか美味い。
巻物も1人前いれてもらい、2人で3人前。
どんどん割箸が動く。
ネタも新鮮で、美味しい。
流石に古くからの人気店。
しかし、鮨とは美味しいもの。
忍者になりきっていたあの頃は、
滅多にお目にかかれない御馳走だった。
その日の午前中、
古くからの知り合いのジムに行ってきた。
サラリーマンを辞め、
色々なことを始めているが、コロナ禍で大変だと思う。
そんな顔ひとつ見せず、相変わらずニコニコ。
そろそろ、ここでリハビリをしようと考えていた。
1回、500円で、好きなだけ。
1日1万歩は、時間がかかる。
アポなしでジムについた時、
誰も居なくて数分待っていた。
すると高橋さんの車が来た。
丁度、本屋さんに行ってきたとのこと。
嬉しいことに買ったばかりの本を手にしていた。
コロナ禍でも頑張っていた。
帰りに仰ぎ見ると空は春の色に見えた。
高橋さんは、空に飛び出しそうに元気だった。
きっと彼も、子どもの頃、
忍者に憧れていたに違いない。(笑)
しかし、この頃、
「伊賀の影丸」や「サスケ」など忍者ものの漫画を見かけない。