Tierney Sutton ~ Something Cool
人と逢ったり、打合せにとよく「茶廊 車門」の二階に来る。
久し振りの人とランチしながら語ったり、
頼りにしている人のアドバイスを聞いたり、
落ち着いて話せる場所。
今日は、一人で夕飯。
<久し振りの、ハヤシビーフライス>
じっくりと煮込んだハヤシビーフ。
オムライスみたいに卵で包まれたライスとたっぷりのソースは、見事に合う。
呑んでしまいそうになる。(笑)
昔の洋食店ぽい優しい味で、美味しい。
一人で食べていると時々想いだす。
サラリーマン時代、年に何十回も霞が関に行ったことがあった。
朝一番の新幹線に乗った。
たいてい十時時過ぎから十二時半ごろで会議が終わる。
盛岡に帰る前、仲間とよく日比谷公園の松本楼でランチ。
一時過ぎなので、待つこともなく座れた。
いつもテラス席で、オムレツのハヤシソース。
ある日、すずめが隣のテーブルのパンを突いて飛んだ。
仲間と「東京のすずめは凄いね」と笑った。
その彼の家では林檎も栽培し、後に彼が引き継いだ。
病に侵されても続けた。
毎年、瑞々しい数種類の林檎が届いた。
ある年、息切れしつつ大きな箱を車から降ろした。
「どう?」と聞くと。
「酒も飲めないが、ぼちぼち」と言いう。
痩せた背中を見送った。
いつか忙しかった頃の話でもしながら、一緒に食べたかった。
あれから3年以上の月日が流れた。
食べ終えて、いつもの深煎りの珈琲を飲みながら、辺りを見回す。
漆黒のいかにも頑丈そうな太い梁。
この蔵は、東日本大震災の時、皿の一枚も壊れなかったそうだ。
そのことを聞いたせいか、よく天井や梁を見る。
明治の建物で当時の写真が入口の傍に飾られている。
隣は当時としては、相当にモダンな店構えの洋装店があったらしい。
この蔵は、昭和二十年代後半には喫茶店になり、今に至っているそうだ。
美味しくも、ちょっと切ない宵の口。
行き交う人の白いマスクが灯りに浮き上がって見えた。
こんな時が来るなんて・・・