盛岡食いしん爺日記
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7月の末。
盛岡市八幡町と隣接する松尾町の料亭「喜の字」で
懐石の弁当を食べながら会合。
久し振りの料亭「喜の字」。
この街は、江戸時代からの歓楽街で茶屋などが多かった。
明治期になると、花柳界として賑わった。
八幡界隈は、幡街(ばんがい)と呼ばれ、
芸妓衆は本町の本街と競い合っていた。
昭和の頃、料亭や飲食店が連なっていたが、
今は賑わいも影を潜め料亭は「喜の字」だけが残っている。
数年前までは、年に何度かは2階の大広間に上がった。
芸妓さんの顔もしばらく見ていない。
殆どか夜で、昼に来た記憶は1度だけ。
創業大正九年料亭「喜の字」
落ち着いた佇まい。
いつもこういう建物を見ると思う。
使われた木材、竹、壁の材料などを作る人がいて
大工、壁塗り、建具や畳の職人が仕上げていく。
多くの人々が関わっている。
ここで色々な人が集い、様々な話をしたのだろう。
門を潜ると打ち水。
I Hear a Rhapsody - Bill Evans, Jim Hall
女将さん達に迎えられ部屋へ。
久し振りの喜の字の料理。
総勢10人ほど。
乾杯から始まり、私はノンアルコールビール。
老舗料亭の安定の味。
派手さこそないが、しっかりとした味付けでどれも美味しい。
参加した方々の話も盛り上がる。
私は食べることに集中しない様に意識して耳を傾ける。
ご飯は見た目にも美しい。
椀物も美味しい。
この時は、皆さんの話を少し聴きそびれたかもしれない。
そう言えば十年近く前に女将さんから教わった花がある。
「突抜忍冬(つきぬきにんとう)」
裏手の路地から見た庭の花だ。
不思議な花だと思い訪れた時に聞いた。
葉から突き抜ける様に茎が伸びる。
花の外側は、紅に近いオレンジで、
内側は、白から黄に変る。
女将さんから一輪いただいた。
仄かに甘い香りがした。
たぶん、五月の初めだったと思う。
まちづくりなどの話も終わり、中締め。
色々と新しい情報もあった。
女将さんとの話も楽しく日程を調整し、
参加してよかった。
帰る前に、奥の小部屋を見せてもらった。
各部屋ごとに違う趣。
大広間や今日の部屋以外に奥の小部屋に上がったことがある。
全て案内していただいたが、
どの部屋だったか分からなかった。
ただ覚えているのは、
こういう空間で話すと、天下国家とは言わないが、
普段より広い大きな世界の話になったものだ。
帰り道、一番上等の靴を履いていった自分が、
ちょっと小さい人間で少し気恥ずかしい。
まあ、まだまだ自分は、そんなものだろう。
慰めながら車に向かった。
盛岡市松尾町
料亭「喜の字」