Eric Carmen - All by Myself
<音楽が出ます、音量に注意>
盛岡市紺屋町
造り酒屋「菊の司」の蔵、向かいには角打ちの「平興商店」
染物屋、南部煎餅店などと続く。
盛岡の古い街の一つ「紺屋町」
歩けば、自然に足取りがゆっくり。
あの日の取材の事は前にも記事にした。
夕暮れの窓、クラムボン。
灯りは琥珀色、零れる焙煎の香り。
「なるほど綺麗だ」とカメラマン松本伸さんは、シヤッターを切り出した。
<盛岡食いしん爺のもりおか自慢より・撮影 松本伸(無断転載はご遠慮下さい)>
外を撮り終え、琥珀色の窓を眺めていた。
しばらくして、灯りと香りに惹かれるようにドアを引いた。
マスターは、店にいなかった。
突然の飛込み取材に驚く娘さん。
でも、笑顔で「うちでよろしければ、いいですよ」
「仕事に打ち込む姿、いいなあ~」
レンズ越しに呟き、松本さんはシャッターを切る。
珈琲豆がひと回りするごとに湧きあがる香り。
「クラムボン」という名
宮沢賢治の「やまなし」に出てくる。
「クラムボンがわらったよ」
クラムボンの意味は、諸説があるらしい。
自分の感じたままに言うと、
カニたちが見上げたみなもに映る、
流れが生みだしては消える「泡たち」だろうか?
マスターは、猫の本を出したほどの人。
きっと賢治が好きなのだろう。
マスターの娘さんは「焙煎の仕事が一番好きです」と言った。
焙煎機の珈琲豆から目を離さない。
その集中した眼差しを捉えるカメラ。
どこか楽しそうな瞳にも見える。
父がら子へ受け継がれるクラムボンの珈琲。
とても深い味で、後味がすっきりして飽きない。
だからファンが多いのだろう。
カメラは、娘さんを追う。
レンズを透した世界は、きっと爽やかで、
ほのぼのとしているに違いない。
これで、取材は十分。
クラムボンの空気と作り手の想いは写真が語ってくれるだろう
朝から数軒続けての飛込み取材で二人はへとへと。
珈琲とプリンでひと休み。
松本さんと色々な話になった。
色々な人の仕事ぶりを取材を振り返ると思う。
何でも長く続けることは難しい。
ふと若手クリエーターの話を思い出した。
「まだ、あまり売れなくていいんです。ゆっくり歩んで50代、60代になったら売れればいい」
「どうして?」
「今は、自分の作品に対する批判に、ぶれない自信がないんです」
<クラムボンのクラシカルな珈琲と人気のプリン>
クラムボンで、お薦め100gを二袋買っておいた。
一つを松本カメラマンに手渡すと。
「嬉しいなあ、帰ってからの楽しみ」
で、解散。
後日の編集作業は、
どの写真も素敵で気に入り、選ぶのに時間がかかった。
あれから、ほぼ2年
マスターは逝ってしまったけれど、
美味しいクラムボンの珈琲は変わらず続き、
「ねこ町のクラムボン」は、今でも書店の棚に並んでいる。
猫好きなので、
時々、見ている。
ふと誰かと話したくなってスマホを手にした。
クラムボン
住所 盛岡市紺屋町5-33
019-651-7207