Friday Night Plans - "Plastic Love"
<音楽が流れます、音量に注意>
「一茶寮」
蔵の雰囲気そのままのカフェ。
この灯りが憎い。
気がつけば、今と昔を行き来している。
久し振りに夢を見た
背景は暗く、ぼんやり数人の顔が次々に浮かんでは消えた。
無声で、口を開けても聞こえない。
むせた様な咳で目が覚めた。
しばらく見ていない「夢」
遡っても覚えがない。
思えば昔、
社会人になり、数年が過ぎ仕事も慣れた頃、何度も同じ夢を見た。
学生時代の夢だ。
毎回、リアルだった。
それは、こんな夢。
起きて時計を見ると昼過ぎ。
たっぷり眠ったといい気分。
次の瞬間、
「あっ今日は試験だ!」
「単位を取れなくなる!」
「卒業できない!」
跳ね起きる。
焦りで顔が歪む。
1、2分後には、
今、既に働いている現実に安堵する。
そして、いつも、
「どうして、こんな夢を何度も見るんだろう?」
と思った。
なんだか冷たいアイスクリームが食べたくなった。
ふんだんにかかったチョコレート。
アイスクリームをすくうと、その都度、いい感じに混ざり美味しい。
仕事に没頭していた頃、よく此処に来た。
ある日、離れたテーブルに顔見知りのカップル。
俯き加減の女。
時折、身を乗り出して小声で話す男。
見ない様にしても耳が立つ。
一茶寮は、今も音がない。
蔵の静かな中で、聞えるのは話し声と足音。
微かな音を蔵の空気が増幅させる。
二人が立ち上がった時、半身が柱に隠れていた私を見た。
一瞬、男の脚が鈍くなった。
女は、階段を下りて行った。
あれは夏だった。
今でも二人の足音が聞こえてきそうだ。
秋になり、二人一緒の場面を見る事はなくなった。
数十年の間の人々の話し声が、太い梁や高い天井に染みついてる様な気がした。
アイスクリームの甘さとチョコレートの後味を残したまま、
今日は帰ることにした。
外に出ると蜘蛛がいた。
蜘蛛の巣を直したりしながら、
じっと食べ物を待つ。
蜘蛛の時間はどう流れているのだろう。
立派な模様。
此処は、暮らしやすい場所なんだろう。
こんなに近くで見るのも久し振り。
駐車場近くの壁の蔦が少し色づいていた。
手を張り巡らした様な先端に、
小さい秋がいた。
蔦が紅く染まる頃、北国の街では、
もうすぐ、一桁の気温に身震いする。
あの頃の秋、いったい何をして、
何を話していたのだろう?
思い出せないが、夢だけは幾つもストリーを覚えている。
今年も静かに忍びよる秋。
「えっ、何を言いたいのかって?」
「特に、何もないのですが・・・」
ただ、あの頃は、何かと一心に向かっていたと思うのです。