「どこで、飼育しているんですか?」と聞くと、
「盗人(ぬすっと)の森だよ、ここから、近いですよ」
「えっ?」
思わず聞き返した。
盗森(ぬすともり)と言うらしいが、
「ぬすっとのもり」と呼んでいる様だ。
微かに聞き覚えのある「盗森」
小さなテントの下、炭火で焼ける岩魚を待ちながら、
お爺さんと話していた。
しばらく怪訝そうな顔をしていたと思う。
「ほら、宮沢賢治の、森の話のぬすともり」
<焼きあがった岩魚>
大ぶりな方は400円、普通は300円。
100円玉を4枚渡し、串を受け取る。
鼻先にいい香り。
ほくほくして食べても型くずれしにくい。
こんがりとした皮も美味しい。
岩手山麓には、清水が多いそうだ。
奇麗な水で育て週末には、ここで焼く。
「前はあちこちに卸していたんだが、今はこじんまり」
「そうなんですか・・」
「でも、お婆ちゃんが食堂やってるから、その分はね」
「どこで、やってるんですか?」
「岩魚食堂だよ」
「えっ!あの小岩井駅のすぐそばの」
だいぶ前から気にはなっていた。
「今度、行ってみます」
池を見に行ってみたいと言うと
「宮沢賢治の話の舞台を見に、よく来るよ」
確かに「盗森」を眺めてみたい。
雫石町の手づくりアイスクリーム「松ぼっくり」
その敷地内の産直の隣に週末だけの小さなテント。
岩魚を食べ終え、もう一本、買い込んで帰った。
宮沢賢治の「注文の多い料理店」に収録されている「狼森と笊森、盗森」の話
黒坂森の大岩が語りかける。
小岩井農場の北、岩手山の麓に四つの森があった。
森や野原が広がっていた。
そこに4人、やって来た。
「畑を起こしていいか!」と皆で周囲の森に聞く。
「いいぞお」
「家建ててもいいかぁ~」
「火を焚いてもいいかぁ~」
「少し木をもらっていいかぁ~」
森は「いいぞお」と答えた。
それを聞いて仕事を始めた。
その後、何度か事件が起こるが森と話して解決。
自然と人間が共存する話なのだろう。
宮沢賢治の作品には、
今、必要とされるメッセージが山ほどあると思う。
さて、本棚を探してみよう。