もう2時を過ぎていた。
「なに、食べたい?」
と花巻から訪れた二人に聞いた。
「和食系がいいです。例えば、おそばとか」
答えは明快。
列車で1時間もかからない盛岡と花巻。
往来する人も多い。
しかし、近い花巻から来たと言っても、
1年半前までは県外で暮らしていた二人。
盛岡は、まだまだ点の世界。
ちょっとした「盛岡・小旅」気分。
初めてだと言う「直利庵」へ。
老舗の風格ある店構えに眼を見張り、
並ぶメニューに迷う二人。
自分は、さっさと<夏季限定の「野菜そば」>
テーブルに載れば「きれいだぁ~」とわいわい。
橙のニンジン、緑のピーマンと鰹節の削り節。
その下に、そばが見えないほどに敷かれたオニオンスライス。
老舗のそばつゆをベースにし、ちょっと中華風。
シャキシャキとした野菜、鰹節がさらに旨味を増す。
「直利庵」夏の風物詩「野菜そば」
「あ~夏だ!」
一人は、天もりそば。
天ぷらを相方に分けては二人で「美味しい~」
薄い衣に閉じ込められたホクホクの旨味。
「綺麗で、上品なおそばですね~」
口にすると「美味しい!」
黙々と食べ始める。
もう一人は、大天そば
温かいそばを食べたかったらしい。
汁を飲み、頷きながら、
「しっかりして美味しい。さすが老舗の味」
とこちらも黙々。
満足して、蕎麦湯を飲みながらの話。
忙しいことより、コロナで県外に行けない。
しばらく故郷の関東にも帰れていないそうだ。
「前に戻るってなんだろう?」
「不要不急ってなに?」
「オンライン会議やリモートワークの善し悪しは?」
何より、自分の眼で必要な物を見極めたい。
ライブにも行きたいし、旅もしたい。
そして美味しい物も。
シンプルでも豊かな暮らしがいい。
なんて話も。
花巻から半日の旅でも楽しく「美味しい!」
そう言う二人の笑顔に嘘はないだろう。