寺井尚子 Ave Maria /Caccini ( Vavilov )
週末、街に少しずつ車が戻って来た。
気がつけば街路樹の緑は濃く、街を覆いだす。
<盛岡市、中央通り>
少し郊外の回転寿司へ。
「清次郎」
やはり、前より静かだ。
ポップだけが回る。
オーダーは、みんなパネル。
珍しくマグロから始めた。
三味を味わう。
トロは、ひと噛みで溶けだす。
美味しい。
次にシドケの握り。
「春の苦味」
一番好きかもしれない山菜が、寿司ネタとは嬉しい。
引き締まった帆立の艶が食欲をそそる。
歯先で、縦に割れ広がる甘味。
美味しい。
シラスの軍艦。
手に持ちひと口、併せてふた口で完食(笑)
バクライと言われるホヤの塩辛。
珍味と言われる独特の風味を大葉と海苔が包む。
ゲソのコリコリの食感とほのかな甘み。
満足、満腹で車へ。
薄暗い中、車の下が気になった。
何もいるはずがない。
実はその日、温泉に行ってきた帰りだった。
網張の麓、玄武温泉の駐車場に停めた瞬間、
サイドミラーに二頭の獣の姿。
急いで車を降りた。
一匹のまだ小さい狸が、草むらを潜る様に走って消えた。
「この辺りにもいるんだ」と思いながら、
車から離れかけた時、下に物影!
車の下に、もう一匹がいた。
逃げない。
ポケットから急いでスマホ。
鼻の辺りが紅かった。
しばらく車の下にいた。
人間は、狸の瞳にどう映るのだろう。
近頃、山里でイノシシやシカなどの被害を聞く。
熊も出始めたらしい。
近年、動物達が人里に近すぎる。
温泉に入りながら地元の人に話すと、
「近頃は多いです。道路で車にひかれる動物をよく見かけます」
コロナで世界中が混乱している。
経済成長もグローバル化も足元が危ういものだと知った。
地産地消、自給力、持続可能・・・
そんな循環型社会へ向かう言葉が脚光を浴びるのだろうか?
それとも、何年か後に、また元へ戻るだけなのか?
静かな街も騒がしい山里も何かがおかしい。
地球が怪しいのでは・・・
気のせいだろうが、狸の眼差しは悲し気に見えた。
※ Facebookにも写真を載せましたら沢山の方からコメント。
「穴熊だと思う」とあり、調べたら「日本穴熊」でした。
里山の温泉のアスファルトの駐車場の下に穴熊とは、ますます驚きです。