ジムノペディ 第1番 / エリック・サティ
<音楽が出ます、音量に注意>
なんだか、せわしない日々が続く。
テレビや新聞では、
相変わらず「誰が悪い、あれが、これが駄目だ」ばかり。
知らず知らず、どこかに染み込んでくる。
「やれやれ」
地球上に生きている限り、何が起きるかわからない。
人間とは、ちっぽけなもの。
そんな時、行きたくなる「きじやまカフェ」
クローズの看板を2枚見かけた。
かまわず、背中を丸めて小さな階段を登る。
案の定、中は賑やかだった。
ガラス戸の中は、別世界。
手焙煎の珈琲の香り、
グランドピアノを囲むように座る数人の笑い声。
しばらく窓の外を眺めてから、珈琲とパンケーキを頼んだ。
「きじやまカフェ」には、二つの行き方がある。
一つは、広々とした高松の池を散歩して、
そろそろ北帰行の白鳥を見て登って来る。
二つめは、丘に連なる住宅街をてっぺん近くまで上る。
車では、二の足を踏む冬の道だが、今年は雪がない。
昨年の冬、
「冬には、来にくいなあ~」と言うと、
オーナーは、「ある鮨屋さんは、真冬でも出前に来るよ、大丈夫!」
今年初めての「きじやまカフェ」
オーナー夫妻と話しているうち、
自然に和む心。
身も心も適度に弛緩し、小春の日差しが心地良い。
そして行くたびに驚きがある。
今度は、絵を描いて出展したという。
スマホで見せてもらった絵は、
一面、群青と藍と蒼の中に一羽の鳥。
好きな雰囲気だった。
日本画用の絵の具も見せてもらった。
素敵な色の名前がずらり。
「梅鼠」
「鳩羽」
「藤紫」
「白緑」などなど。
いちいち楽しくなってくる。
オーナーの深みのある手煎り焙煎の珈琲。
奥さんが銅板で焼くパンケーキ。
狐色の焼き具合で、とても美味しい。
珈琲を飲んでいると奥さんが窓ガラスを指差した。
「キジが来ましたよ」
すぐ傍をのんびりと歩いている。
目の前の樹々の隙間に陽光が差し込み、
雄のキジはとても綺麗だ。
立ち上がり、しばらく見とれていた。
すると鳴き声二つと逞しい羽音を残して飛び去った。
キッチンの窓の傍にいたオーナーは、
「おう~ 二羽飛んで行ったよ」
奥さんも続けて、
「しょっちゅう見ますよ」と笑う。
なるほど、
ここは「きじやまカフェ」
樹々の緑が枯れた季節だけ、外から見ることができる。
後は、緑に包まれている。
今年は、2月の中頃から人が絶えないそうだ。
その日も夕方、夜も予約が入っていた。
オーナー夫妻の自然なもてなしに、
訪れた人は、背中を伸ばして日常に戻っていく。
白鳥が旅立つ前に、
海老とトマトソースの飛び切り美味しいパスタを食べに来よう。