Andrew York plays "Home" on an 1888 Antonio de Torres
<音楽が出ます、音量に注意>
盛岡の古い街並みを歩いて気分が変わる。
でも、ちょっと疲れた8千歩。
いなだ珈琲舎でひと休みを決め込む。
カウンターの端っこで、Kブレンドを飲み、
マンデリンを挽いてもらう。
「疲れてません?」とマスター。
「うん、ちょっと」と苦笑いで答える。
マスターは、高校の同期会に行ってきたそうだ。
想いの他、色々な人がいて、楽しかったと話す。
二十代、三十代とは違い、味が出てくる頃。
つまらないのはサラリーマンの出世話と言うから、
笑ってしまった。
しばらくして、混んできた。
一人の女性が隣に座った。
誰に言うとでもなく、
「今日は旧暦の元旦なのてお八幡さんにお詣りして来ました。」
何気なく、優しい語り口に、つい、
「そうでしたか」と答えた。
ゆっくりと会話が始まった。
色々と話をしていると昭和一桁の生まれだと言う。
驚いた顔を隠せなかった。
矍鑠(かくしゃく)としていたし、言葉も滑らかだった。
「おかげさまで、急ぎ足で歩けるし、目も耳も大丈夫です。」
こちらから色々と聞いてみた。
盛岡の駅前や今は無き松尾鉱山が空襲された話。
いなだ珈琲舎の向かいの盛岡劇場の近くに、ダンスホールがあったそうだ。
「終戦のお言葉」を知る人は、一人でカウンターで、珈琲を飲む。
伸びた背筋に、こちらも猫背を正す。
「おかげで、温まりましたし、とても美味しかった」
とドアを出て行った。
そのしっかりとした足取りは、確かに早かった。
手帳の年齢早見表で確認すると後3年で90歳。
マンデリンを受け取って、ドアを出ると、
冷たい風にひるんだが、もう少し歩くことにした。
しかし、雑味の無い美味しい珈琲を飲みながら、
もっと話を聴きたかった。