<音楽が出ます、音量に注意>
9月中旬、盛岡の街から車で30分ほど。
小岩井を抜け、網張温泉方面へ。
岩手山に突き当たる様にして西へ折れるとすぐ。
鞍掛山の登り口、相の沢牧野を見渡す場所。
四季を通じて訪れる。
そこにお世話になっている人を案内した。
実はその日、出来上がった雑誌を届け、御礼をする予定だった。
ところが待ち合わせのカフェが休み。
「よければ、ちょっとドライブしません?」
ここしばらく家に閉じこもる日々だったそうだ。
まず、県営スケート場近くの「クローネ洋菓子店」に寄った。
一度店を閉めたが、嬉しいことに今年の7月に再開したと聞いていた。
ケーキを買い、鞍掛山の麓を目指した。
途中で珈琲も。
<牧野の緑を眺めながら>
スプーンなどは、たいてい取材用で積んである。
生地は柔らかく滑らかで、全体として甘すぎず、シンプルで美味しかった。
雑誌のことやら話す流れもゆっくり。
「こういう中にいると穏やかになりまね」
確かに。
長袖が心地良い。
キャンプのテントが二張り。
しばらくして、もう一人、テントを張り始めた。
その時、
白と黒の猫が見えた。
猫好きの二人は立ち上がる。
大人になったばかりだろうか。
右脚が曲がっている。
懸命に片膝をついてバランスをとって歩く。
キャンプ場はペット禁止のはず。
張りかけのテントの傍から、こちらを見た。
一歩だけ近寄るとぴょんぴょんと器用に小走り。
別のテントの方へ行く。
「どうしたんでしょう、こんなところに」
飼い主は見当たらない。
さらに牧野に沿って小走り。
ついには遠くのテントを通り過ぎ、見えなくなった。
遠目には毛並みも綺麗に見えた。
帰る時間になり、車に。
飼い猫だとしても近隣に家は無く、あったとしても彼方のはず。
いったいどこへ向かったのだろう。
自然は厳しい。
これからは冷え込んでいくばかり。
食べ物はどうなのだろう?
浮び上った草の上に静かに横たわる姿を振り払うようにしてアクセルを踏んだ。
帰り道は小さな命の心配ばかり。
送り届けて家に向かいながら想う。
もし近寄ってきたら、自分はどうしたのか?
今夜は寝つきが悪くなりそうだ。