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暖簾をくぐる前から、店の雰囲気と味を知っている。
「いらっしゃい、元気そうですね!」
と中華鍋を持ち、火と格闘しつつ親方の笑顔。
テーブルに座り、一応メニューを眺める。
そして、いつもの「レバーモヤシ炒め定食」
サラリーマン時代は、一週間に一度は来ていた。
食いしん爺のサラメシ。
焼きそば、レバーモヤシ炒め定食かモヤシラーメンだった。
二年ほど前久し振ぶりに来てから、また度々訪れるようになった。
レバーは、せいぜい焼き鳥ぐらいだが、ここではモリモリ食べる。
ここは、盛岡、中の橋通り「えぞっこ」
今は、向かいの肴町商店街のシンボルだった「ななっく」も閉店。
昭和レトロの雰囲気に満ちていたバスセンター跡も更地が広がる。
ちょっぴり淋しいが、人通りは衰えていない。
街は呼吸し、暮らす人が創る。
これから、どんな街になって行くのか。
盛岡の中津川の東一帯の古い街並みの何気ない風景がいい。
そんなことを想っているとレバーモヤシ炒め定食が来た。
シャキシャキとモヤシが立っている。
全く臭みの無いレバーは、ほくほくで美味しい。
いつもカウンターから聞こえる「ジュワー!」
中華鍋を見る親方の真剣な眼差し。
平らげて美味しさの秘密を尋ねた。
レバーも十分下ごしらえをして、先に強火で硬すぎず、柔らかすぎずに揚げる。
そしてモヤシと併せてササッと炒める。
「家庭のコンロと違って、火力が強くないとできないでしょうね」
とニコニコしておつりを渡す。
おそらく残業の前なのだろう、数人のサラリーマンとすれ違った。
地上に続く階段を上がると肴町の交差点は、すっかり夜。
風も涼し気で、陽が短くなってきた。
短い盛岡の秋が始まっている。
この街の何気ない風景と暮らしは、とても大切なもの。