<音楽が出ます、音量に注意>
桃が好きだ
薄い皮を剥くほどに甘い香りとほとばしる果汁。
そんな桃を詰め込んだパイ。
マイヤーリングに入った途端に見つけた。
「桃のバイと珈琲をお願いします」と頼んで奥のカフェへ。
<桃のパイ>
香り高い桃そのままにパイにするとは、お見事。
パイのサクサク感と完熟の桃。
素敵な組み合わせ。
小さな庭を眺めながら桃のパイを
満ち足りた時間
美味しい予感が的中し、今、優しそうな顔でいるだろう。
マイヤーリングのケーキは、ほど良い甘さで飽きがこない。
だからいつでも2個はいける。
小学生の頃、数軒先の庭に桃の樹があった。
さして手入れをしている風でもなかったが八重桜の様な花が咲き、
夏にはたわわに実をつけた。
その家の奥さんが、籠いっぱいに届けてくれるのだ。
なんと美味しい果物だろうと想っていた。
夏の楽しみだった。
ランドセルを背負った帰り道。
鈴なりの桃の前で、立ち止まりそうになる。
止まったら最後、近寄って手を伸ばしそうだった。
小学校5年の夏、桃は届かなかった。
「母さん、桃がいっぱいなってるのに、なんで届かないんだろう?」
「そのうち届くでしょ」
何日も同じ会話を繰り返した。
その年、桃は無くなっても届かず、秋に一家は関東に引越てしまった。
桃の樹は、ただ残った。
ある日、家に祖父が来て縁側に腰かけていた。
庭に実のなる樹を植えるという。
「桃の樹がいい!」と頼んだが、結局、植えられたのは梨の苗木。
何年かして小さな実がなり、こっそりかじってみたら舌が少し痺れた。
結局、鳥の集いの樹になった。
その後、家は車で一時間半ほど北の町に引越し、祖父がわざわざトラックで運んで来た。
今も実家の池のそばで、毎年、小さな実をつける。
言葉少なかった祖父の樹。
ほど良い甘さを味わっていると蘇る想い出。
今では、心のアルバムも分厚くなっている。
未来より、振り返りの世代。
でも、ちょっと切ないページが多いのは、どうしてだろう。