<音楽が出ます、音量に注意>
「寄り過ぎの写真が多いですよ」
とある人が言う。
そのとおり。
両手でスマホを持ち、画面を見ているうちに、ついつい寄ってしまう。
ほどよく焼けた美味しそうな香りが、「もっとそばへ・・・」と囁く。
言い訳したら倍以上に返ってくる。
大人は、黙って微笑んで、
言いたい事を飲み込む「僕はプロじゃない」(笑)
盛岡は「むら八のトンカツ」
衣は柔らかな肉汁を閉じ込め、噛むと気持ちよくて美味しい。
「トンカツを初めて作った人は誰なんだろう」と向かいで呟く。
1890年代に銀座の煉瓦亭で「ポークカツレツ」として誕生したらしい。
その後、上野で「トンカツ」という名前に。
「むら八」では、先にゴマが入った小さなすり鉢が出る
ゴマを擦るほどにいい香りたつ。
すり鉢にソースを入れる。
ご飯、キャベツとみそ汁は、スタッフが「お代わりいかがですか」と声をかける。
「キャベツいかがですか?」
いつも準主役のキャベツとみそ汁が準主役。
当然「お願いします」
少し前、知り合いの家族と会った事がある。
家族三人で来ていた。
息子さんは、野球に明け暮れる高校生で、爽やかで真っすぐな眼。
しばらくして膝を怪我をしたと聞いた。
でも、いい家族と仲間がいるから彼の眼差しは、変わらないだろう。
食べ終えてお茶を飲んでいた
「神妙な顔して、どうしたの?」
「いや、特には・・・」
「あのね、今日、出かけて来たら、栗の花が満開だったの」
向かいの人もお茶をゆっくり飲みながら話し出す。
栗の花が咲き乱れる頃になるとお母さんが、
「そろそろ梅を塩漬けにしなくてはね」と言うそうだ。
そののち、乾燥させたり、赤紫の紫蘇を入れたり。
話は続く
立葵は、気がつくとどんどん伸びる。
下から次々に花を咲かせ、てっぺんにくれば夏も盛りになる。
「お祖母ちゃんから聞いたの」
屋敷林の栗の木や道端の花が知らせる暦。
美味しいトンカツといい話に目の周りが軽くなった。
「では、帰りますか、送ります」
レシートを掴んでもう一方の手を伸ばしてパーで制した。
帰ったら今夜は、もう少し仕事をしてみよう。