<音楽が出ます、音量に注意>
2月のある夜
夕飯を食べそこねて9時近く、さほど食欲もない。
どうしようか?
「そうだ!」と閃いて電話した。
「承知しました。20分ほど、お時間をください」
コンビニ寄ってガソリン入れたりして電話した店に向かう。
そこは、盛岡の上田、バイパス沿いにある「むら八本店」
<テイクアウトで「カツサンド」>
「ありがとうございました」
と受け取って車に。
さほど食欲がなかったはずが、もう我慢できない、できたてをひとくち頬張る。
ニンマリする自分。「たまらなく幸せだ~」
パンとトンカツとキャベツをまとめ上げる自家製ソース。
「美味しい!」
薄暗い運転席で、一人ニンマリしている人がいたら、見て見ぬ振りをするだろう(笑)
口の中に入っているのに二つめを掴んでいた。
その日は、初めてトンカツもテイクアウト
トンカツは一つ頼んでも、
透き通ったケースが二つ渡される。
一つにはトンカツ、もう一つにキャベツがびっしり。
これは、家まで我慢(笑)
帰り道
久し振りに、盛岡の大きな病院の前を走った。
2月は、父の命日
その病院で息を引き取った。
父が実の姉の様に慕っていた人が最後に間に合わず、
睨むような目で聞いた。
「苦しまずに逝ったの、どうだったの?」
「はい、とても静かに逝きました」と答えた。
意識が無くなっても父は、体力があった。
平均寿命と比べれば、まだ若くて身体も大きく、もともと屈強な男だった。
ベッドの傍にセットされた例の色々な機器の血圧の上り下がりを睨んでいた。
もうだめかと想うと回復する。
そして、3日3晩、父は苦しく荒い呼吸を続けた。
硬いはずの身体を大きく反らす。
胸が宙に浮いている様に見えた。
そして、ガクンとベッドに落ちてまた反りかえる。
肋骨が軋んで、ばらばらになるんじゃないかと想った。
2日目には、たまらなくなり、
「もう、いいんだよ、静かに休んでいいんだよ!」
と心の中で小さく叫んだ。
今年に入って、父の慕っていた人の訃報を聞いた。
穏やかに苦しまず逝ったと思ったままの父に逢っているかもしれない。
病院の休憩室で、食べたカツサンド。
美味しくて、なんだか目頭が熱くなったのを覚えている。
今でも、テンションが下がったり、
あまり食欲がない時も、むら八のカツサンドに救われる。
いつもゲンキをもらう。