悲しき雨音/カスケーズ
<音楽が流れます、音量に注意>
9月25日金曜日
昼過ぎからの雨は強くなった。
運動不足の人を誘って盛岡市前潟のイオンへ。
近頃、雨の日によく行くイオンモール。
コロナ前よりは、まだ建物の近くに停められる。
車を降りて小走り。
ペットショップを見て本屋。
急ぎ足で、あちこち巡る。
時々、別行動。
山用品の店を覗いた。
ケトルを探し、良いのがあった。
今度、買いに来よう。
歩数計は、3000歩を超えた。
そろそろ温泉に行こうと飲食店街を出口に向かった。
「ぴょんぴょん舎」の前にテイクアウトの立て看。
白金豚の弁当がある。
そのま二人は、レジへ吸い込まれた。
十五分ほどの待ち時間。
さらに歩いてトータルは、ほぼ4000歩。
玄武温泉の「ロッジたちばな」で、ゆっくり温まる。
外へ出ると雨風が強まり、まだ緑の葉が飛び交う。
車に戻り「ここで食べますか!」
それぞれ膝の上に置いて「美味しそう!」
急ぐ気持ちを抑えて濡れティッシュを準備。
慎重に蓋を開ける。
車に広がるニンニクやナムルの匂い。
白金豚とご飯を一緒に。
ジワリ、肉の旨味とご飯の甘みが重なる。
時々キムチとナムル。
美味しい!
歩いて温泉、そして「白金豚」でいい一日だった。
フロントガラスにぶつかる雨粒。
コンビニで買った珈琲でひと息。
隣で何かをググっている。
「モールって、遊歩道的な歩行者専用の商店街ってことですよね」
現代的なショッピングセンターの中に長い商店街が作られている。
人は歩きたくなるわけだ。
高校三年生の終わりは長い受験で終わった。
しばらく東京の叔父に世話になった。
「十条銀座」を歩いて駅に向かいあちこちの大学に行った。
駅から伸びる商店街の中に、
立ち食いの焼き鳥屋があった。
前を通るとたまらない大人の匂い。
サラリーマンが立ち並ぶ。
ある日、帰り道で偶然、叔父と駅で一緒になった。
「ちょっとよるか?」と焼き鳥屋の前で止まった。
「好きな物を頼むんだよ」
と言われたが直ぐに声が出ない。
「レバー」と小さい声。
叔父達の真似をして一味をふる。
こんがり焼けてタレが染みたレバーは、とても美味しかった。
後は真似た。
「オレも、それ一本」
春になり、学生生活の始りは叔父の世話になった。
ある日、夕方に高校時代の友達と渋谷で待合わせ。
小腹が空いて焼き鳥屋の前に立ち、レバーを頼んだ。
「勉強、大変だね~ はい一本サービス!」
少し話をした。
地味な出で立ちだったし緊張もあった。
「学生生活は楽しい?」と聞かれ、曖昧に答えると、
「また、一年はすぐだよ頑張って」とこっそりツクネのサービス。
浪人生と思ったらしい。
これから遊びに行くとは言えなかった。
それからは足早に通り越した。
アパート住まいを始め、しばらくして叔父の家に来た。
一年も経っていないのに十条銀座は懐かしく見える。
寄ろうと決めていた。
その日、毎日いたお兄さんは見えなかった。
暗闇の中、風と雨は強くなってきた。
「そろそろ帰りますか」
寒く感じてエアコンを入れた。