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12月下旬の土曜日

長い付き合いのデザイナーのY女史の誘い。

ぴょんぴょん舎、稲荷町の本店で待合せ。

オーナーとは初めてだったのに、すぐ3人で「食」の話で盛り上がる。

 

「さて、何を食べますか?」とオーナー

あのスキーブームの頃は、もう記憶の片隅。

みんな色とりどりのウェアを着て食べていた。

そのころから、カルビ、タン塩、レバー そして別辛で冷麺、そしてサラダかナムル。

「今ではメニューをほとんど見ないんです」と正直に言うと、

Yさん、

「ソルロン温麺、知らないの? じゃあ辛温麺も知らないわね」

「はい、知りません」

オーナーは、柔らかな笑みを浮かべて、

「では、何か焼きながら色んな麺を食べましょうか」

 

 

<雪濃(ソルロン)温麺>

とことん牛骨を煮詰めに煮詰めたスープは、まるでMILKでも入ってるかのよう。

ひと口食べ始めたら、止まらない。

コラーゲンたっぷりの優しいスープ。

 

 

 

 

 

家で作っても美味しかった。また憎いデザイン。

 

 

<続いてピビン冷麺>

冷麺のルーツの一つらしい。

極細麺に絡む濃厚なソースは、コクの極み。

とても美味しい。

 

 

 

 

極めつけは「辛(シン)温麺

 

デザインしたYさんは、まだ未完成と言うが、

「大きなカマドに大きな鍋

湯がわんわんと湧き

肉と香辛野菜からユッケジャンスープが出来ていく」と添えられた言葉とはまる。

 

 

 

 

スープにご飯を載せれば、ご飯がすすむ。

 

 

 

どれも決め手は、スープ。

旨味とコクを閉じ込められ、ひと口飲めば身体が求めだす。

 

<肉の旨味>

オーナーの邉(びょん)さん自らが焼いた黒毛和牛は、格別に美味しい。

強火で何度かこまめに裏返し、しばらく置いてゆっくり返す。

口に入れると肉の旨味が噛むほどに広がる。

とても美味しい。

肉への想いも並々ならぬものを感じた。

 

 

知っているつもりの「ぴょんぴょん舎」

実は何も知らなかった。

珈琲も美味しく、大好きなクラムボンの豆だった。

 

 

米のアイスクリーム

 

レンガとオブジェが落ち着いた雰囲気を創り出す稲荷町本店が一番好きだ。

 

これからはゆっくり肉を焼き、その時々に色々な麺を楽しみ、

デザートと珈琲まで、

「焼肉フルコース」をゆっくり楽しむことにしよう。

 

印象に残った 2つのこと

「十年を越えて生きた牛に感謝し、どう美味しく食べるか、その想いが大切だと想っています」

もう一つ、

「地元の良い物を米、野菜から珈琲まで、徹底して使いたい」

 

3人でテーブルを囲んだが、食いしん爺の胃袋に一番入った(笑)

満腹でも、いつまでもスープを飲んでいた。

 

 

今年、神奈川の叔母一家が「盛岡冷麺を食べたい」と言うのでここに来た。

「素敵な場所ね、落ち着いて食べれる」と話していた。

 

<レンガを基調に色々な物で飾られた独特の空間>

美味しい珈琲を飲んでいると

ふと、宮沢賢治の童話「やまなし」のクラムボンの一節が浮かんだ。

川底の蟹が言う、

「クラムボンが笑ったよ」

このクラムボンを自分では水面に映る「泡」だと想っていた。

しかし、泡を通じて見えたもっと広い世界のことなのかもしれない。

 

オーナーも賢治が好きなのかもしれない。

 

 

 

 

話し込んでいるうちに3時間、慌てて身支度(笑)

レジで眼に入った水色の本。

 

3日後「辛温麺」を確かめる様に食べに行った帰り、その本を買った。

 

 

ちょっとした自分なりの想いで久しく読書を止めていた。

その夜、水色の表紙を開いた。

気がつけば夜は更け、あとがきを読んでいた。

 

「盛岡冷麺物語」には、

冷麺に関わって来た人の壮絶な生き様が記されていた。

またまだ、自分には、人に語る自信も無いがこれだけは分かった。

銀座やスカイツリーのソラマチに店を出す人は、こだわり方が凄すぎる。

 

 

読み終えて、じっと火の上の肉を見つめるオーナーの姿が浮かんだ。

今夜は、なかなか寝付けないだろう。

 

この記事には、まだまだ深いコクが出ていない(笑)